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医師・看護師間の上下関係トラブルにおけるパワハラ認定の判断軸

医療機関では、医師と看護師の役割分担が明確である一方、現場では指示系統の曖昧さや専門性の違いから上下関係の摩擦が生まれやすく、その結果としてパワハラと評価され得る言動が問題化するケースが増えています。特に、内科・外科・小児科・整形外科、美容医療のように、診療行為のスピードや判断の正確性が求められる領域では、感情的な指示や過度の叱責が発生しやすく、事案の難易度も上がります。

本稿では、医師・看護師間で生じる上下関係トラブルをパワハラ認定の軸で整理し、実務上どこに注意すべきかを、社労士の視点から解説します。

【パワハラ判断の基本枠組み】

医療機関でのパワハラ判断は、厚生労働省の指針に基づく「優越的関係」「業務上必要性」「就業環境の害」の3軸で整理することが有効です。多くの院長から相談を受けますが、医師は診療の責任者であり、看護師に対して明確な業務指揮権を持つため、優越的関係が成立しやすい点が特徴です。

例えば、手術室や救急外来など、瞬時の判断が求められる現場であっても、「人格否定」「侮辱」「威圧的態度」があった場合には、業務上の必要性を超える不適切な指示としてパワハラが成立する可能性があります。

私が実際に対応したクリニックでも「忙しいから仕方ない」「現場のスピードを落とせない」という理由で、医師が看護師に強圧的な言い方を続けてしまい、離職や看護部の崩壊につながったケースがありました。このように、医療現場の特性がパワハラの温床になり得る点を理解する必要があります。

【医師の指示がパワハラと評価される典型例】

医療現場で問題になりやすい言動には、次のようなものがあります。

・看護師の判断ミスに対し、人格を否定する発言
・診療補助の場で怒鳴る、物に当たる
・業務と無関係な指示(プライベートの買い物依頼など)
・「使えない」「辞めてしまえ」等の退職強要に類する発言
・美容医療における売上ノルマの強制と叱責

特に美容クリニックでは、カウンセリングの成約率や物販売上のプレッシャーから、医師や管理職が看護師に数字を求める場面が増えています。しかし、このプレッシャーが過度な場合、パワハラとして労使紛争に発展する傾向があります。

【判断が分かれるグレーゾーン】

医師が看護師のミスを指摘する行為自体は業務上必要です。しかし「指導」と「パワハラ」の境界が問題になります。

判断軸としては次の視点が重要です。

・必要な指導内容が、適切な言葉・態度で伝えられているか
・指導の目的が明確か
・時間と場所が適切か(患者の前で叱責していないか)
・継続性・反復性があるか
・感情的になっていないか
・看護師のメンタルに支障を与えていないか

私の支援先でも、「医師の声が大きく、叱責と受け取られやすいタイプだった」というケースがあり、本人には悪意がないにも関わらず、複数の看護師がストレスを訴え、人事トラブルに発展しました。客観的な評価軸に基づく記録が重要になることを痛感しました。

【組織側が構築すべきパワハラ防止体制】

医療機関で上下関係トラブルを未然に防ぐには、次の仕組みづくりが有効です。

・医師向けのコミュニケーション研修
・看護部との役割分担の明確化
・医師指示書や業務フローの整備
・院内相談窓口の設置
・ヒアリング記録と改善報告書の運用
・管理職(主任・師長・事務長)へのパワハラ対策教育
・美容医療の売上管理に関する評価基準の透明化

医科領域では、医師が「技術職」であると同時に「管理職的ポジション」を担うため、コミュニケーションに関する教育が不足しがちです。私も現場に入る際、医師向けのハラスメント研修を組み込むことで職場環境が大きく改善した例を多く経験しています。

【トラブル発生時の社労士実務】

パワハラが疑われるケースでは、まず事実関係の整理が重要となります。

・双方のヒアリング
・現場目撃者の証言
・ラインやメモなどの証拠保全
・診療体制への影響分析
・再発防止策の立案
・就業規則の整備(懲戒・服務規律)

医療機関の特性として「患者の安全」が最優先であるため、単に労務問題として片付けるのではなく、診療フロー全体に支障が出ないかを総合的に判断する必要があります。社労士としての現場経験から、医療機関特有の緊急度と組織構造を理解した上での対応が必須です。

【まとめ】

医師と看護師の上下関係は、構造上どうしても優越的関係が生まれます。その中で感情を含んだ指示や叱責が行われると、パワハラ認定につながる可能性が高くなります。医療機関としては、業務フローの明確化、コミュニケーション教育、相談体制の整備を通じて、トラブルを未然に防ぐ取り組みが欠かせません。

 

執筆:特定社会保険労務士 鈴木教大(社会保険労務士法人レクシード)

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