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デンタルクリニックにおける残業代未払い・固定残業代トラブル~社労士が見た現場の実情と解決への道筋~

近年、歯科業界においては人材不足が深刻化しており、歯科衛生士や歯科助手の採用・定着に頭を悩ませる院長先生も多いのではないでしょうか。こうした中で労務管理が後手に回り、特に「残業代の未払い」や「固定残業代制度の誤った運用」によるトラブルが相次いでいます。私は社会保険労務士として数多くのデンタルクリニックを支援してきましたが、この問題は現場で繰り返し見てきた課題です。今回は実際に私が顧問先で体験した事例をもとに、トラブルの背景と解決策についてお伝えしたいと思います。


事例1:固定残業代を導入していたが、制度設計の不備で未払い認定
ある地方都市のデンタルクリニックでは、歯科衛生士の採用難を背景に「高めの給与提示」で人材を確保しようとしました。その一環として「固定残業代制度」を導入し、毎月30時間分の残業代を給与に含めるという仕組みを採用していました。
しかし、実際に労働時間を集計すると、月によっては残業が5時間程度しかないことも多く、「残業しても残業しなくても変わらないなら早く帰った方が得」ということで残業せずに帰宅するスタッフに対する院長の不満が噴出しました。さらに、雇用契約書や就業規則には「固定残業代」という文言が明確に記載されておらず、内訳も不透明な状態。結果として「固定残業代は有効に成立していない」と労基署から是正勧告を受け、実質的には未払い残業代として支払いを余儀なくされました。
このケースでは、制度設計の誤りと説明不足が重なり、スタッフの信頼を失うとともに、過去3年間分の残業代を遡及して支払うことになり、数百万円単位の出費が発生しました。院長先生からは「最初から社労士に相談しておけばよかった」と言われたことを覚えています。


事例2:タイムカードと給与明細の不整合から発覚した未払い
別のクリニックでは、受付兼助手のスタッフから「退職前に残業代を精算してほしい」との申し出がありました。院長先生は「うちはサービス残業なんてさせていない」と強く主張されましたが、実際にタイムカードと給与明細を突き合わせると問題が明らかになりました。
このクリニックでは診療終了後に片付けやレセプト業務が残り、毎日30分~1時間程度の残業が発生していました。しかし、給与明細には残業代の項目がなく、いわゆる「込み込みの月給」として処理されていました。本人は数年間我慢していましたが、退職時に「未払い残業代請求」を検討し、社労士である私に相談が寄せられたのです。
最終的に、院長先生には法的リスクを説明し、労働者と合意のうえで未払い残業代を清算。事態は裁判には至りませんでしたが、同様の請求が他のスタッフから出ないよう、就業規則の改定と勤怠管理の徹底を進めることになりました。


トラブルが起きる背景
これらの事例に共通するのは、「残業代を払っていないつもりはなかったのに、結果として未払いが発生していた」という院長先生の認識と現実の乖離です。特にデンタルクリニックは小規模な事業所が多く、院長先生が経営・診療・労務管理をすべて担わざるを得ない環境です。そのため以下のような背景が見られます。

  • 固定残業代制度の誤用:契約書や就業規則に明記されていない、または内訳が不透明。

  • 勤怠管理の甘さ:タイムカードはあるが、実際の給与計算と連動していない。

  • 「医療業界特有の慣習」:診療後の片付けや準備を「当然の延長業務」とみなし、残業と認識していない。

  • 人材不足による依存:少人数のスタッフに負担が集中し、恒常的に残業が発生してしまう。


社労士としての対応と解決策
私は顧問先に対し、以下のステップで対応を行っています。

  1. 現状把握:勤怠データと給与明細を突合し、未払いの有無を確認。

  2. 制度設計の見直し:固定残業代を導入する場合は、時間数・金額・超過分の精算方法を明確に記載。

  3. 就業規則・契約書の整備:院長とスタッフ双方が誤解しないよう、文面で明文化。

  4. 勤怠管理の徹底:勤怠システムを導入し、労働時間を客観的に管理。

  5. スタッフへの説明:制度の趣旨や残業代の支払方法を丁寧に説明し、納得感を醸成。

実際にこの仕組みを導入したクリニックでは、スタッフの不満が減り、離職率も改善しました。院長先生も「安心して診療に専念できる」と評価してくださっています。


おわりに
残業代や固定残業代を巡るトラブルは、金銭的リスクだけでなく、スタッフの信頼を失い、人材流出につながる深刻な問題です。特に医療現場では「人」が最大の資産です。スタッフが安心して働ける環境を整えることが、結果としてクリニックの成長や患者さんの満足度向上にも直結します。
社労士として現場を見てきた経験から強調したいのは、「トラブルは未然に防げる」ということです。きちんとした制度設計と透明性のある運用さえあれば、残業代を巡る争いは避けられます。もし自院の仕組みに少しでも不安がある場合は、早めに専門家に相談されることを強くお勧めします。


医療(医科歯科)クリニック専門  特定社会保険労務士  鈴木教大
https://www.medical-sr.jp/

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