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歯科医院の人材構成は、歯科医師・歯科衛生士に加えて、歯科助手と受付スタッフが大きな柱となります。ところが現場では、この「歯科助手」と「受付スタッフ」の役割が曖昧になりやすく、不満や摩擦が生じるケースが少なくありません。
私は社会保険労務士として多くの歯科医院をサポートしてきましたが、「業務分担の不明確さ」が早期離職やチームワークの崩壊を引き起こす典型的な原因であることを実感しています。
以下では、実際の歯科医院での事例や私自身の関与経験を交えながら、課題の背景と解決の方向性について整理します。
ある歯科医院では、受付スタッフが患者対応や会計だけでなく、器具の滅菌や診療補助まで求められていました。「受付として採用されたのに、なぜ診療室の仕事まで?」という不満が蓄積し、数か月で退職してしまいました。
逆に歯科助手からは「受付は電話に出ているだけで、私たちは器具洗浄、診療補助、院内清掃まで担っている。さらに忙しいときは受付も手伝わされる」との声が上がります。同じ給与水準なら「自分だけ負担が大きい」と感じるのは当然です。
院長が業務を整理できていない場合、その日の状況で「受付さん、今日は器具出して」「助手さん、会計お願い」と場当たり的に指示を出してしまいます。一時的には回っても、長期的には「自分の役割が何か分からない」という不満が積み重なります。
歯科医院はスタッフ数が限られるため、どうしても「兼務文化」が生じます。院長としては「みんなで協力して」と思っていても、明文化されないと「押し付けられている」と感じやすくなります。
求人票に「受付業務」と書きながら、実際は「助手業務も当然」という暗黙の前提があるケースがあります。採用後に「聞いていた話と違う」となるのは自然な流れです。
業務が整理されていないと、新人スタッフが「誰に教わればいいのか分からない」「昨日と言っていることが違う」と混乱し、早期離職につながります。
ある歯科医院では、受付と助手の間で「業務を押し付け合う」状態が続いていました。私は業務を洗い出し、「受付が主担当」「助手が主担当」「両方で対応」の3区分に整理し、業務フローを紙に落とし込みました。これにより互いの不満が軽減し、院長も指示を出しやすくなりました。
「受付で採用したが、滅菌や診療補助も任せた」結果、スタッフが「話が違う」と退職したケースもありました。ハローワークに通報されるリスクもあったため、院長には「求人段階で業務内容を正しく伝えること」を徹底していただきました。
「言わなくても分かるだろう」という院長の姿勢が混乱を招いていた医院では、私の提案で業務マニュアルを作成しました。結果、スタッフが「基準」を共有できるようになり、トラブルが大幅に減少しました。
業務分担表を作る
受付と助手の業務を一覧化し、「主担当」「補助」を明示するだけでも不満は減ります。
ジョブディスクリプションを導入
完全なジョブ型までは不要ですが、「あなたの役割」を文章で伝えることは新規採用者にとって特に有効です。
採用面接での説明強化
「受付中心だが、患者案内や簡単な清掃もお願いする場合がある」など、最初に具体的に伝えることが肝心です。
定期的な業務ミーティング
月1回程度でも「業務の偏りがないか」を確認する場を持てば、早期に火種を発見できます。
私は顧問先の歯科医院において、就業規則や給与制度の整備と同時に「業務分担の見える化」を支援してきました。
制度を整えても現場で不満が続けば離職は防げません。逆に「業務分担の明確化」だけで離職率が改善するケースも多くあります。
社労士の役割は法律対応だけでなく、「人と人との関係をどう整えるか」にも及びます。院長が気づきにくいスタッフ間の不満を拾い上げ、現実的な改善策に落とし込むのが私たちの強みだと考えています。
歯科助手と受付の業務分担は、小規模な歯科医院ほど曖昧になりやすく、不満の温床となります。しかし採用時の説明や業務分担表の導入、定期的な振り返りによって十分に改善できます。
「業務分担の見える化」は、スタッフの離職防止だけでなく、院内のチームワーク強化、患者サービスの向上、そして安定経営へと直結します。院長先生には、ぜひ一度立ち止まって「受付と助手の役割」を整理し、スタッフと共有していただきたいと思います。
医療(医科歯科)クリニック専門 特定社会保険労務士 鈴木教大
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