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医療、産休・育休取得者の代替要員不足と職場への影響~筆者の体験から考える持続可能な人事労務対応~

産休・育休取得者の代替要員不足と職場への影響

~筆者の体験から考える持続可能な人事労務対応~

近年、育児休業の取得率は着実に上昇しており、女性のみならず男性の育休取得も社会的に広がりを見せています。これは働きやすい社会の実現に向けて大きな前進である一方で、多くの事業所、とりわけ中小規模の医療機関やクリニックにおいては「産休・育休取得者の代替要員不足」という深刻な課題が浮き彫りになっています。

私自身、社労士として医療・歯科分野の労務管理を支援する中で、何度も現場の声を耳にしてきました。そして実は私自身も、以前勤めていた組織で同じ問題に直面した経験があります。本稿では、その体験談を交えつつ、代替要員不足がもたらす影響や解決の糸口を考えていきたいと思います。


1.私が体験した「代替要員がいない」現実

私がまだ社労士資格を取る前に勤めていた会社での出来事です。ある日、同じ部署の同僚が第一子の出産を控え、産休・育休に入ることになりました。私たちは「おめでとう」と笑顔で送り出したものの、現実には彼女の業務量をどう分担するかという問題がすぐに押し寄せてきました。

当時の職場は10人程度の小規模組織で、人員にほとんど余裕がありませんでした。新しい人を採用しようにも予算は限られており、また業務の専門性も高かったため、外部から短期的に人を入れても即戦力にはなりにくい状況でした。結果的に、残ったメンバーで仕事を割り振るしかなく、私自身も本来の担当業務に加えて、彼女が担っていた経理・労務関連の作業を引き継ぐことになったのです。

最初は「なんとかなるだろう」と思っていましたが、日が経つにつれ心身の負担は増していきました。残業が続き、休日も気が休まらない。気づけば仕事を「カバーすること」自体が目的化してしまい、成果の質を高める余裕がなくなっていきました。

そして半年後、私は疲労から体調を崩し、しばらく休職を余儀なくされました。幸い大事には至りませんでしたが、今振り返れば、これは典型的な「代替要員不足が職場全体を疲弊させる」ケースだったと痛感しています。


2.代替要員不足がもたらす組織への悪影響

この体験から学んだのは、代替要員不足は単なる一時的な業務量の問題ではなく、組織全体に長期的な悪影響を与えるということです。主な影響を整理すると次のようになります。

  1. 残された社員の負担増加
     業務のしわ寄せが一部の社員に集中し、長時間労働や精神的ストレスを引き起こします。

  2. 離職リスクの上昇
     疲弊した社員が退職を選べば、人員不足がさらに深刻化するという悪循環が生じます。

  3. サービス品質の低下
     医療や歯科の現場であれば、患者対応や安全管理の質に直結し、クレームや事故のリスクが高まります。

  4. 職場の士気低下
     「誰も守ってくれない」という不公平感が蔓延し、チームワークが崩れていきます。

こうした影響を目の当たりにしたことで、私は「労務管理の仕組みが職場の持続可能性を左右する」ことを強く意識するようになり、社労士を志す一つのきっかけになったのです。


3.現場でのよくある対応とその限界

医療機関やクリニックでよく見られるのは、以下のような対応です。

  • 既存スタッフによるカバー
     最も多いケースですが、長期的には疲弊を招きます。

  • 短時間勤務スタッフの時間延長
     一時的には効果がありますが、本人の家庭事情などで長続きしないことが多い。

  • 派遣社員・アルバイトの活用
     事務職であれば有効ですが、医療行為や専門性が高い業務では即戦力化が難しい。

  • 院長や管理者が現場に入る
     緊急時には必要ですが、経営やマネジメント業務がおろそかになるリスクがあります。

いずれも「つなぎ」としては機能しても、根本的な解決には至らないのが現状です。


4.社労士として提案する解決の方向性

では、どのような工夫が可能でしょうか。私が現場で提案している主なアプローチは次の通りです。

  1. ジョブシェアリングの仕組み導入
     特定の人に依存しないよう、日頃から業務を複数人で分担し、マニュアルを整備しておく。

  2. 多能工化の推進
     医療事務スタッフが受付業務だけでなく簡単な経理補助もできるなど、スキルの幅を広げる教育を行う。

  3. 外部リソースの積極活用
     給与計算や労務管理の一部をアウトソーシングすることで、内部スタッフの負担を軽減する。

  4. 休業・復職スケジュールの透明化
     産休・育休取得予定者と十分に話し合い、復職の見込みや働き方を事前に共有しておく。

  5. 男性の育休取得促進と人員計画の見直し
     男女問わず休業を取りやすい文化を醸成し、「お互い様」で支え合う体制をつくる。

これらの施策は一朝一夕には実現できませんが、長期的に見れば「代替要員がいないから回らない」というリスクを大幅に減らすことができます。


5.まとめ:体験を通じて伝えたいこと

私自身の経験からも、産休・育休取得は決して職場の負担ではなく、将来に向けた投資であると考えています。休業を取る社員が安心して戻れる環境を整えることは、組織にとって「人を大切にする文化」を築くことにつながります。そしてそれは、長期的に見れば離職率の低下や人材定着につながり、経営の安定性を高めるのです。

代替要員不足に悩む経営者や管理者の方々にお伝えしたいのは、「人員が足りないから仕方ない」と諦めるのではなく、制度設計や仕組み作りによってリスクを最小化できるということです。

私がかつて体験した「疲弊する職場」の記憶は今でも鮮明に残っています。同じような苦しみを他の現場で繰り返さないために、社労士として一つでも多くの職場に寄り添い、解決策を共に模索していきたいと考えています。

医療(医科歯科)クリニック専門   特定社会保険労務士  鈴木教大
https://www.medical-sr.jp/

 

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