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歯科クリニックにおける給与水準の比較と離職リスク~社労士が見た人事労務の課題と解決策~

歯科クリニック経営において、最大の課題のひとつが「人材の定着」です。特に歯科衛生士や歯科助手といったスタッフは慢性的な人手不足にあり、採用難が続いています。その中でしばしば院長先生からご相談を受けるのが、「給与水準を他院と比べられて離職してしまう」という問題です。

Indeedやジョブメドレーといった求人サイトの普及により、スタッフは常に他院の給与条件や待遇を簡単に調べられるようになりました。つまり、院内の給与水準が市場水準に比べて見劣りする場合、スタッフの流出リスクは格段に高まります。

では、社労士の立場から、この問題をどう捉え、どう対応すべきでしょうか。


2. 給与比較が生じる背景

  1. 求人情報の透明化
    インターネット上で条件検索が容易になり、「時給○○円以上」「週休2.5日」といった情報がリアルタイムで比較されます。

  2. 業界全体の人材不足
    特に歯科衛生士は供給が需要に追いついておらず、「より条件の良い職場」に移りやすい環境です。

  3. 地域性の影響
    都市部や競合の多いエリアでは、給与水準が高騰しやすく、クリニック間で「待遇競争」が激化します。

  4. 給与以外の待遇に対する意識の高まり
    有給休暇の取りやすさ、残業の有無、教育体制、福利厚生なども含めて比較されます。

このような背景から、給与水準は常に「見られている」「比べられている」という前提で考える必要があります。


3. 社労士が見るリスク

給与水準が周囲と比べて低い場合、以下のようなリスクが発生します。

  • スタッフのモチベーション低下
    「同じ仕事をしているのに、他院より給与が低い」と感じれば不満が募ります。

  • 採用活動の難航
    新規応募が集まりにくくなり、求人広告費用が増大します。

  • 離職率の上昇
    有能な人材から順に他院へ流出するため、院内のスキルバランスが崩れます。

  • 残ったスタッフへの負担増
    人員不足が常態化し、さらに離職を誘発する悪循環に陥ります。

  • 労務トラブルの火種
    「不当な待遇」と感じたスタッフが労基署へ相談するケースも見受けられます。

社労士としては、これらのリスクを未然に防ぐための給与設計・労務管理が重要と考えます。


4. 解決の方向性

(1)市場水準の把握

まず必要なのは、地域の給与相場を正しく把握することです。

  • ハローワーク求人票

  • 民間の求人サイト情報

これらを参考に、「自院の給与が地域相場のどの位置にあるか」を明確にします。

(2)給与テーブルの整備

感覚的な支給ではなく、経験年数・資格・役割に応じた給与テーブルを作成することが大切です。これにより、給与決定の透明性が高まり、不公平感が解消されます。

(3)給与以外の処遇改善

すべてを給与で解決する必要はありません。

  • 有給休暇の計画的付与

  • 残業削減

  • セミナー参加費の補助

  • 制服・靴代の支給

  • スタッフルームの改善

これらもスタッフにとっては「待遇」として評価されます。

(4)人事評価制度の導入

「成果や貢献が給与に反映されている」と実感できる仕組みを整えることが重要です。例えば、

  • 患者アンケートの評価

  • 自費治療説明の取り組み

  • 後輩指導の実績

これらを評価指標に取り入れることで、給与の納得感を高められます。

(5)定期的な情報発信

院長が「給与や待遇についてどう考えているか」を定期的に伝えることも効果的です。経営状況や方針をオープンにすることで、スタッフの不安を和らげられます。


5. 社労士が支援できること

  1. 地域相場の調査と給与診断
    「自院の給与は相場に比べてどうか」を数値で示します。

  2. 就業規則・賃金規程の整備
    賃金決定のルールを明文化し、トラブルを予防します。

  3. 人事評価制度の設計
    小規模クリニック向けにシンプルな制度を導入できます。

  4. 院長・スタッフ双方の相談窓口
    第三者の立場で労務相談を受け、早期解決につなげます。


6. まとめ

給与水準の比較は避けられない現実です。しかし、単に「他院より高く支払う」ことが解決策ではありません。社労士の視点から重要なのは、

  • 相場を正しく把握し、自院の位置づけを理解すること

  • 公平性と透明性のある給与制度を整備すること

  • 給与以外の処遇改善を含め、総合的な働きやすさを高めること

これらを実行することで、スタッフが「ここで働き続けたい」と思えるクリニック経営が実現します。

院長先生にとって「給与は経営コスト」ですが、スタッフにとっては「生活の基盤」です。その両者のバランスを取りながら、持続可能な人事労務体制を築くことが、これからの歯科クリニックに求められる課題だといえるでしょう。

医療(医科歯科)クリニック専門  特定社会保険労務士  鈴木教大
https://www.medical-sr.jp/

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