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デンタルクリニックにおける経営課題の一つに「院長のリーダーシップ不足」があります。
スタッフの退職理由を掘り下げると、給与や待遇といった条件面だけでなく、「院長が方向性を示してくれない」「院内がまとまらない」といった声が多く聞かれます。リーダーシップは単なる経営者の資質ではなく、クリニック全体の安定運営を左右する重要な要素です。
今回は、私が実際に労務相談を受けてきた事例を交えながら、院長のリーダーシップ不足がもたらす組織不和と、その解決の方向性について考えていきます。
ある歯科クリニックでは、院長が「患者さん第一で対応してほしい」とスタッフに伝えるものの、具体的な優先順位や判断基準を示していませんでした。
受付スタッフは「多少待たせても丁寧に説明するべき」と考える一方、衛生士は「予約通りに診療を進めるべき」と判断。結果的にスタッフ同士で衝突が生じ、患者からも「対応がばらばらだ」という苦情が寄せられました。
このケースでは、院長が現場に任せきりにしてしまったことが原因です。院長が自ら診療理念や行動基準を整理し、全体会議で共有していれば、方向性のずれは防げたはずです。
別の歯科医院では、スタッフ同士の人間関係のトラブルが絶えませんでした。
年上スタッフが若手に強い口調で指導を行う一方、院長は「なるべくスタッフ同士で解決して」と静観。結果として、若手スタッフは孤立感を強め、次々と退職していきました。
相談を受けた際にスタッフの意見をヒアリングしたところ、「院長が仲裁してくれない」「誰が頼りになるのかわからない」との声が多く挙がりました。リーダーとして問題解決に関与しなかったことが、信頼喪失につながった典型例です。
院長のリーダーシップ不足は、次のような悪循環を引き起こします。
方針が曖昧 → スタッフが自己判断で動き、バラバラの対応に。
不満が蓄積 → スタッフ同士の不和や不信感が強まる。
離職の増加 → 新規採用コストや教育負担が増大。
院長の孤立化 → 問題が表面化しても手を打てず、更に不和が拡大。
このサイクルが続くと、患者対応の質も低下し、経営に直結するリスクへと発展します。
では、院長に求められるリーダーシップとは何でしょうか。私が関わったクリニックの改善事例をもとに整理します。
まず、クリニックとしての価値観や行動基準を言語化することが不可欠です。
「患者さんを笑顔で帰すために、時間管理を徹底する」「衛生士の業務は院長が最終確認を行う」など、具体的なルールを定め、スタッフに周知しました。これにより、現場での判断が統一され、トラブルが激減しました。
リーダーシップ不足の背景には、院長とスタッフ間のコミュニケーション不足があります。
ある医院では、毎週15分のショートミーティングを導入しました。院長が自ら進行役を担い、「今週の良かった点」「改善点」をスタッフと共有。小さな取り組みですが、院長の姿勢を見たスタッフは「先生が真剣に考えてくれている」と受け止め、雰囲気が大きく変わりました。
人間関係トラブルが起きやすい背景には、「誰がどのように評価されているかわからない」という不透明感があります。
人事評価制度を整え、院長が基準を示すことで、スタッフの納得感が高まり、不満が院長に集中するリスクを減らせます。
現場に立ち会う中で強く感じるのは、「院長のリーダーシップ不足は性格の問題ではなく、仕組みで補える部分が大きい」ということです。
診療スキルに長けた院長であっても、人のマネジメントは別の能力が必要です。社労士として第三者的な立場から仕組み作りをサポートすることで、院長が本来の診療に集中でき、組織の安定につながります。
歯科クリニックにおいて、院長のリーダーシップ不足はスタッフ間の不和や離職リスクを招きます。
しかし、診療理念の明文化、定期的なコミュニケーション、公平な評価制度の導入といった取り組みによって、組織は大きく変わることができます。
院長一人が変わることで、クリニック全体の雰囲気は確実に改善されます。スタッフが安心して働ける環境づくりは、患者満足度や経営の安定にも直結するのです。
医療(医科歯科)クリニック専門
特定社会保険労務士 鈴木教大
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