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診療録とレセプト内容の不一致によるトラブル~社労士が見たクリニック現場の実情~

医科・歯科クリニックの経営において、「診療録(カルテ)」と「レセプト請求内容」の整合性は極めて重要です。診療報酬請求は、診療録に基づいて正しく行うことが大前提ですが、現場ではカルテの記載不足や請求入力の誤りなどによって、両者が一致しないケースが少なくありません。その結果、返戻・減点といった経済的なダメージだけでなく、監査リスクやスタッフの精神的負担につながることもあります。今回は、社労士として実際に医科・歯科クリニックの現場で見聞きした事例を交えながら、この問題の実態と対応策を考えてみたいと思います。


1. よくある不一致のパターン

(1)カルテ記載不足による算定根拠の欠如

ある歯科クリニックでは、歯周基本検査を実施したにもかかわらず、検査結果や実施日がカルテに記載されていないというケースがありました。レセプト上は算定しているのに、診療録に根拠が残っていないため、返戻対象となり、後日、医院長とスタッフが説明資料の作成に追われる事態となりました。

(2)医師の指示と請求内容の食い違い

医科クリニックで見られたのは、処方箋に記載された日数と、レセプトに入力された日数が異なるケースです。薬剤の投与日数の不一致は監査でも厳しくチェックされる項目であり、うっかり入力ミスが返戻や減点につながることがあります。

(3)スタッフの入力ミス

診療録の内容をもとに事務スタッフがレセプト入力を行う際、病名や処置コードの取り違えが起こることも少なくありません。特に新人スタッフや、教育体制が整っていない職場では、同様の誤りが繰り返される傾向があります。


2. トラブルが引き起こす影響

診療録とレセプト内容の不一致は単なる「返戻処理」で終わらない場合もあります。

  • 監査リスクの増大
     厚労省や保険者による個別指導・監査の対象となることがあり、経営へのダメージは計り知れません。最悪の場合、返還請求や行政処分につながることもあります。

  • スタッフの負担増加
     返戻処理は、再確認・再入力・説明資料の作成など時間と労力を要します。結果として本来の診療補助や受付業務が圧迫され、職場全体の疲弊を招きます。

  • 経営者とスタッフの信頼関係の悪化
     「誰が記録を怠ったのか」「入力したのは誰か」といった責任追及が発生し、院内の雰囲気が悪化する事例を実際に目にしてきました。


3. 社労士として見た現場事例

私が関わった歯科クリニックの事例では、ある月のレセプト返戻件数が通常の3倍に膨らんだことがありました。原因を調査すると、歯科衛生士が行った歯周治療処置の記録がカルテに残っていないケースが頻発していたのです。
ヒアリングを進めると「忙しくて後でまとめて記載しようと思っていた」「誰がどの患者を処置したか曖昧なまま入力された」といった声が上がりました。結果、院長が返戻対応で休日も潰れることになり、スタッフの士気も大きく低下していました。

このようなケースでは、労務管理の観点からも「記録を残す時間を業務フローに組み込む」ことが欠かせません。単に「しっかり書いて」と指示するだけではなく、診療後すぐに記載できるようなシステムやシフト調整を取り入れることが、再発防止につながります。


4. トラブル防止のためのポイント

  1. 診療録とレセプトを定期的に突合チェック
     月次でサンプルを抽出し、両者の整合性を確認する仕組みを設ける。

  2. 入力作業のダブルチェック体制
     新人や経験が浅いスタッフの入力は、必ずベテランが確認するフローを導入。

  3. スタッフ研修の継続的実施
     レセプト算定ルールや記載方法について、年1回以上の定期研修を行う。

  4. ITシステムの活用
     カルテとレセプトを自動連携させるシステムを導入し、入力の二重手間やミスを防ぐ。

  5. 記録時間の確保
     スタッフが診療後にまとめて記載するのではなく、業務の合間に記録する時間を確保するようシフトを組む。


5. まとめ

診療録とレセプトの不一致は、クリニック経営において軽視できないリスクです。単なる「入力ミス」や「記録漏れ」であっても、返戻や監査リスクにつながり、経営・人間関係・スタッフのメンタル面にまで影響を及ぼします。
社労士として現場を見てきた経験からも、この問題は「個人の注意力」に任せるだけでは解決できません。仕組みとして整備し、業務フロー・教育体制・システム活用を組み合わせることで、はじめて安定した運営が実現できます。

クリニック経営者の皆さまには、ぜひ早い段階からこのリスクに向き合い、組織的な対応を進めていただきたいと思います。


 

医療(医科歯科)クリニック専門 特定社会保険労務士 鈴木教大
https://www.medical-sr.jp/

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