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歯科クリニックにおけるレセプト業務は、医療収益の基盤を支える重要な業務です。その中でも「歯科衛生士業務の算定ミス」は、意外と見落とされがちなリスクの一つです。院長や事務スタッフが把握しているつもりでも、厚労省の通知や算定要件を正確に理解していないと返戻や減点につながり、経営に大きな影響を与えます。今回は、私が顧客先で実際に見てきた事例をもとに、このテーマを掘り下げてみたいと思います。
歯科衛生士業務には「院長の指示・指導監督の下で実施」という要件がつきものです。
例えばスケーリングや歯周基本治療などは、単に衛生士が施術したからといって算定できるものではありません。カルテに院長の指示が記載されていない、指導監督の事実が記録されていない場合、監査時に減点対象となります。
現場でよくあるのは次のようなケースです。
院長が多忙で診察室に顔を出さず、衛生士が単独で施術してしまう
カルテに「Dr.指示」との記載がなく、衛生士の記録だけで終わっている
衛生士が行った処置をスタッフが誤って算定入力してしまう
これらは一見「小さな事務ミス」に見えますが、積み重なると返戻や減点で数十万円単位の損失につながります。
ある歯科クリニックでは、歯周基本治療を衛生士が行った際に、カルテに院長の指示が残されていませんでした。長年同じやり方でやっていたため、スタッフは「問題ない」と思い込んでいたのです。
しかし、監査で「歯科医師の指示・確認の記録がない」と指摘され、半年分のレセプトが減点対象となりました。その金額は数百万円規模。さらにスタッフは「自分たちのせいでクリニックに損害を与えた」と精神的に追い詰められ、結果的に離職者が出てしまいました。
別のケースでは、若手衛生士がスケーリングの算定要件を理解しておらず、「初診からの経過期間」や「再評価の有無」を確認せずに処置を重ねてしまった事例がありました。返戻の処理に追われた事務スタッフが疲弊し、院内の雰囲気が悪化してしまったのです。
診療報酬改定の頻度が高く、要件が複雑化している
衛生士に十分な算定ルール教育がされていない
カルテ記載の統一ルールが院内で徹底されていない
事務スタッフと臨床スタッフの連携不足
これらが複合的に絡み合うことで、ミスが常態化してしまいます。
私が顧問先で提案しているのは、以下のような仕組みづくりです。
算定要件の共有マニュアル作成
厚労省通知や算定ルールをかみ砕き、院内マニュアル化する。特に歯科衛生士向けに「この処置は院長の指示が必須」「この場合は再評価が必要」といったチェックリストを作成。
カルテ記載ルールの徹底
「Dr.指示」や「確認済」のスタンプを活用し、指示・監督を明確に残す仕組みを導入。
月1回の算定勉強会
衛生士・受付・事務スタッフが一緒に確認することで、知識のばらつきをなくし、連携を強化。
監査を見据えた内部チェック
レセプト提出前にサンプルを抽出し、算定要件・カルテ記載の整合性を点検する。
歯科衛生士業務の算定ミスは「現場の慣れ」や「教育不足」から生じることが多く、経営的損失だけでなく、スタッフの士気低下や離職リスクにもつながります。
算定業務は医療行為と同じく「正確さ」が命です。院長が主体的に算定ルールを理解し、スタッフ全員に共有する仕組みを整えることで、返戻や減点を未然に防ぐことができます。
医療(医科歯科)クリニック専門 特定社会保険労務士 鈴木教大
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