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歯科医院や医科クリニックにおいて、診療報酬請求(レセプト業務)は経営を支える極めて重要な業務です。しかし実際の現場を訪問してみると、「レセプト業務は○○さんしかできない」「もしこの人が辞めたら請求できなくなる」といった属人化のリスクを抱えているケースが少なくありません。
属人化は業務効率の低下だけでなく、経営リスクやスタッフ間の不公平感にも直結します。今回は、私が社労士として実際に見聞きした事例を交えながら、この属人化リスクとその解決策について整理します。
ある中規模の歯科医院では、開業当初から勤めるベテランスタッフがレセプト請求を一手に担っていました。院長も他のスタッフも、「この人に任せておけば安心」と完全に依存していたのです。
しかし、そのスタッフが家庭の事情で急に退職することになったとき、事態は一変しました。残されたスタッフは「入力の仕方もルールも分からない」、院長も「どこから手を付けてよいか分からない」と途方に暮れ、請求が遅れ、資金繰りにまで影響しました。
別のクリニックでは、レセプト業務を担当していた事務員が突然の病気で長期休職に入りました。急遽別のスタッフが引き継いだものの、算定ルールや入力方法が口頭でしか共有されておらず、返戻や減点が頻発。結局、外部の専門会社に依頼して再提出を行い、余計なコストと労力が発生しました。
こうした事例から浮かび上がる属人化リスクは以下の通りです。
退職・休職による業務の停滞
特定の人しか分からない仕組みになっていると、その人が不在のときに業務が止まります。
返戻や減点の増加
引き継ぎが不十分だと算定ルールの誤解が生じ、返戻・減点リスクが増します。
内部統制の弱体化
誰も中身をチェックできない状態が続くと、ミスや不正が見過ごされる温床になります。
スタッフ間の不公平感
「自分だけが責任を負わされている」という担当者の不満や、「あの人しか分からない」という他スタッフの疎外感が、職場の不和を生みます。
まず必要なのは、レセプト業務の流れを「見える化」することです。
算定ルール、入力手順、チェック体制を文書化したマニュアルを作成し、誰でも一定水準で処理できる仕組みにすることが基本です。実際に、マニュアルを整備したクリニックでは、新人スタッフが比較的短期間で業務を引き継げるようになり、業務負担が分散されました。
「一人に任せきり」を避けるために、ダブルチェックを制度化することも有効です。入力者と確認者を分ける、診療録とレセプト内容を突き合わせる、といった仕組みを組み込むことで、誤りや不正を防ぎやすくなります。
どうしても内部に余裕がない場合、レセプト代行やコンサルティングを利用する選択肢もあります。外部に委託することで内部の負担を軽減し、同時に最新のルールや法改正情報を取り入れることも可能です。ただし、外部依存もリスクを伴うため、必ず内部に最低限の理解者を残すことが大切です。
属人化を防ぐためには、スタッフを計画的に育成し、業務をローテーションさせることが重要です。新人や若手にもレセプト業務を段階的に経験させることで、将来のリスクを分散できます。ある医院では、毎月の請求処理を二人一組で行うようにし、「誰が休んでも業務が回る」仕組みを実現しました。
レセプト業務は、クリニックの収益を確実に守る生命線です。しかし、属人化によって「一人に依存する体制」を放置すれば、突然の退職や休職、知識の偏りによって経営そのものが揺らぎかねません。
私が顧問を務める多くのクリニックでも、属人化が解消されるとスタッフの不安が和らぎ、院長も安心して診療に専念できるようになったという声をいただきます。
属人化リスクは、決して他人事ではありません。早めの体制づくりと仕組み化で、安心して医療提供に集中できる職場環境を整えていただければと思います。
医療(医科歯科)クリニック専門
特定社会保険労務士 鈴木教大
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