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近年、デンタルクリニックにおいて「レセプト業務」を外部に委託するケースが増えています。レセプト請求は専門性が高く、診療報酬制度の改定や細かい算定ルールへの対応が欠かせません。院内スタッフだけで対応するには負担が大きく、特に規模が小さい歯科医院では、レセプト代行業者との契約が一つの選択肢となってきました。
しかし一方で、外部委託には「契約トラブル」が付きまといます。私は社労士として、複数のクリニックから「レセプト代行業者とのトラブルで困っている」と相談を受けてきました。今回はその事例と、契約時に押さえておくべきポイントについて解説します。
ある歯科医院では、レセプト代行業者に業務を委託したところ「返戻率が高い」という問題が発生しました。請求内容に誤りが多く、結果として保険者から返戻され、院内スタッフが修正作業に追われることに。委託したはずの業務が逆に負担増となり、院長も「契約料を払っている意味がない」と強い不満を抱えていました。
別のクリニックでは、契約当初は「月額固定費」と聞いていたものの、実際には「返戻対応費」「加算業務費」などの名目で追加請求が発生しました。明細の説明も十分でなく、契約書に細かい記載がなかったことから、最終的に法的トラブル寸前に発展しました。
レセプト業務は患者の診療情報を扱うため、個人情報保護法上のリスクがあります。ある医院では、代行業者が下請けに再委託していたことが後から判明しました。情報管理体制が不十分な下請け先に患者情報が流出するリスクがあり、院長は大変驚かれていました。
「途中解約できない」「解約には高額な違約金がかかる」といった契約も見られます。実際に「業務に不満があっても1年契約を縛られた」というケースを私は相談として受けたことがあります。契約書の中途解約条項を十分に確認していなかったことが原因でした。
多くのトラブルは「契約書に明記されていない」ことから生じます。料金体系、成果物の定義、返戻対応の範囲などを口頭で済ませてしまうと、後から「言った・言わない」の問題に発展します。
紹介や価格だけで業者を選んでしまい、情報管理体制や過去の実績を確認せずに契約してしまうケースが目立ちます。
「外部に委託すれば安心」と思い込み、院内でのチェック体制を整えずに丸投げすることで、返戻や不正請求のリスクが高まります。
業務範囲(算定チェック、返戻対応、再請求まで含むか)
成果物の定義(返戻率を一定以下にするなど)
料金体系(追加費用が発生する条件を明記)
再委託の可否と情報管理体制
契約期間と解約条項(中途解約の条件・違約金の有無)
委託契約に「個人情報取扱い契約(守秘義務)」を盛り込む
ISMSやPマークの取得、情報管理マニュアルの有無を確認する
下請け再委託がある場合、その承諾を文書化する
毎月の返戻率を報告させる
不審な追加費用がないか確認する
院内でダブルチェック体制を維持する
私は顧問先クリニックに対して、契約前に「契約書レビュー」を行うことを提案しています。法律事務所ほど細かくなくても、労務管理の観点から「不利益条項がないか」「解約条件が妥当か」をチェックするだけでトラブルを防げます。
また、あるクリニックでは、委託後に「業務改善ミーティング」を3か月ごとに設定しました。業者とクリニック側が定期的に顔を合わせ、課題と改善策を話し合うことで、返戻率が下がり、双方の信頼関係も強まりました。
レセプト代行業者への外部委託は、上手に活用すればクリニックの負担軽減につながります。しかし、契約内容が曖昧なまま委託すると、返戻増加や高額な追加請求、個人情報漏洩リスクなどの大きなトラブルに発展しかねません。
「契約書の明確化」「業者の信頼性確認」「院内チェック体制の維持」
この3点を徹底することで、トラブルを未然に防ぐことができます。社労士としても、労務リスクだけでなく、こうした外部委託契約リスクにも目を配ることが重要だと実感しています。
医療(医科歯科)クリニック専門 特定社会保険労務士 鈴木教大
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