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医療・歯科クリニックでは、インターネット上の口コミだけでなく、院内での口コミ(噂話・陰口)が職場環境を大きく左右します。
患者向けの口コミサイトが経営に影響を及ぼすことはよく知られていますが、スタッフ間での悪意ある発言や噂もまた、離職やモチベーション低下を招く深刻な問題です。
私は社会保険労務士として、さまざまなクリニックの労務相談を受けてきましたが、「口コミによる内部トラブル」は、いまやどの職場にも潜む課題と言えます。
ある歯科クリニックでは、新しく入職した衛生士に対し、既存スタッフが陰で「〇〇先生はすぐ怒るよ」「あの人は前の職場ですぐ辞めたらしい」と噂を流しました。
その結果、新人は数週間で退職。院長は「教育がうまくいかない」と悩んでいましたが、実際には職場内の人間関係が口コミで崩れていたのです。
別の医院では、あるスタッフの私生活(離婚や交際など)が一部の人に広まり、昼休みにその話題で盛り上がることが日常化。本人は精神的に疲弊し、最終的には休職に追い込まれました。
このような「職場内口コミ」は、パワハラやモラハラにも発展しかねません。
内部の口コミは、単なる“おしゃべり”では済みません。以下のように、経営全体へ波及していきます。
職場の信頼関係が崩れる
噂を信じる・信じないで派閥が生まれ、協力体制が取れなくなります。
離職・採用難の要因となる
「ここは雰囲気が悪い」「すぐ人が辞める」という内部口コミが、業界内に伝わり、求人応募が激減します。
患者対応への影響
スタッフのモチベーションが下がることで、笑顔や言葉遣いがぎこちなくなり、患者の印象も悪化。結果として外部口コミにもつながります。
口コミトラブルへの対応は、“感情”ではなく“仕組み”で制御することが重要です。
以下のようなステップをとることで、職場環境を守ることができます。
① 就業規則・服務規律に明文化する
「他の職員の名誉を傷つける行為」「虚偽の情報を流布する行為」を禁止事項として明記します。
多くのクリニックでは「SNSでの投稿は禁止」としても、院内での発言までは規定していないケースが多いのです。
内部の口コミこそ、明文化しておくことで抑止力になります。
② 管理職・リーダー研修で“噂の扱い方”を教育する
現場リーダーが噂を放置すれば、それは“許された文化”になります。
「噂話を広める前に本人へ確認」「根拠のない話は拡散しない」など、日常的な会話のルールを共有するだけでもトラブルは大幅に減少します。
社労士としては、ハラスメント研修やスタッフ会議の際に口コミのリスクと法的背景を説明しておくと効果的です。
③ 相談窓口を整備し、“誰かが見ている環境”を作る
「誰にも言えない」が一番危険です。
口コミによって傷ついたスタッフが孤立しないよう、匿名相談や外部相談窓口(社労士)を設けましょう。
相談が早期に上がれば、火種の段階で鎮火できます。
④ 懲戒規定とのリンク
悪質な虚偽の噂や誹謗中傷が繰り返された場合は、懲戒処分の対象とする必要があります。
特に、名誉毀損やプライバシー侵害にあたる発言は、就業規則第○条(服務規律違反)に基づき、戒告・減給・出勤停止等の処分が可能です。
放置は他のスタッフへの悪影響を招くため、毅然とした対応が求められます。
⑤ 面談・ヒアリング時の留意点
口コミ発生時の聞き取りでは、誰が何をどのように発言したかを記録化(メモ・議事録)することが重要です。
事実確認が曖昧なまま処分を行うと、逆に「不当な取り扱い」としてトラブルになります。
社労士として第三者立場で面談に同席し、感情論に流されない調査を行うことが信頼につながります。
医療機関ではスタッフの年齢層・職種・立場が多様で、噂の温床になりやすい特徴があります。
特に「医師・歯科医師」「看護師・歯科衛生士」「受付・事務」の階層構造があり、上下関係や専門職意識の差が口コミの温床になります。
そのため、“役職やキャリアに関係なく発言できる風土”の醸成が不可欠です。
たとえば、月1回のミーティングで「最近気になったこと」「職場の良い口コミ・悪い口コミ」などをテーマに共有する時間を設けると、表面化しにくい課題を拾いやすくなります。
口コミを完全に無くすことは不可能です。
しかし、「陰口」から「建設的なフィードバック」へと変えていくことはできます。
そのために必要なのは、院長・リーダーの姿勢とルールの明文化です。
社労士として関わる際には、単に労務トラブルの火消しではなく、
「口コミを起こさない組織文化の構築」こそが最終目標です。
噂や陰口は立派な職場リスクであり、放置すれば離職・評判悪化へ直結
就業規則・服務規律に明記し、懲戒との連動を明確化する
管理職教育・相談窓口・面談記録を通じて再発防止を図る
医療現場特有の階層構造を理解し、意見を言いやすい風土をつくる
口コミは「人間関係の鏡」です。
だからこそ、見過ごさず、制度と教育で整えていくことが、
安心して働ける医療機関をつくる第一歩です。
医療(医科歯科)クリニック専門 特定社会保険労務士 鈴木教大
https://www.medical-sr.jp/
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