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〜社労士が見た現場の実態と再発防止策〜
近年、クリニックや歯科医院において「退職スタッフがSNSや口コミサイトに悪評を書き込む」「院内の情報を外部に漏らす」といったトラブルが増えています。
ひとたび投稿が拡散されれば、事実関係の有無にかかわらず、評判の低下・患者離れ・採用への悪影響といった深刻なダメージを招きます。
ある歯科クリニックでは、勤務態度に問題のあったスタッフが退職後、匿名で口コミサイトに「院長のパワハラがひどい」「残業代も支払われなかった」と投稿しました。
実際には事実無根で、他のスタッフも困惑していましたが、口コミはネット上で拡散され、新規患者が目にする状態が長く続きました。
また、別のクリニックでは、退職スタッフが院内マニュアルや給与体系の資料を個人SNSに投稿。
意図的ではなく「在職中の思い出として」軽い気持ちで載せたものの、業務機密の漏えいとして問題になりました。
このような事案は、悪意の有無を問わず、経営リスクとして極めて重大です。
原因として、以下のような背景が挙げられます。
退職時の感情的なこじれ
退職時に「引き留め」「人間関係の不満」「退職理由への理解不足」などがあると、感情的な不満が残りやすくなります。
情報管理に対する意識の低さ
スタッフ側に「SNS投稿も業務情報も守秘義務の対象」という意識が不足しているケースが多く見られます。
就業規則・誓約書の未整備
守秘義務やSNSの利用ルールが明文化されていないと、法的対応の根拠を欠くことになります。
私が顧問として関わった医療機関の中でも、「辞めた後に発生するトラブル」は年々増えています。
在職中の労務管理はしっかりしていても、退職時のケアが十分でないことで問題化するケースが多いのです。
特に医療機関は地域密着型の経営が多く、口コミの影響が非常に強い業界です。
事実関係がどうであれ、インターネット上に残るネガティブ情報は、患者・求職者双方の信頼を損ないます。
また、スタッフが院内情報をSNSに投稿してしまう行為は、個人情報保護法や不正競争防止法(営業秘密漏えい)の観点からも法的リスクを伴います。
こうしたトラブルを防ぐためには、以下のような多層的な対応が必要です。
退職時のヒアリングと書面対応
退職面談の場で「守秘義務」「情報持ち出し禁止」「SNS投稿の制限」などを明確に伝え、退職時誓約書を取り交わします。
特に「退職後も守秘義務が継続すること」を明文化しておくことが重要です。
就業規則・SNSポリシーの整備
就業規則内に以下の内容を明記しておきましょう。
・個人情報・診療情報の取り扱い
・SNSや口コミサイトでの発信に関するルール
・守秘義務違反・信用毀損行為に対する懲戒処分の対象
これにより、退職後にトラブルが発覚した場合でも、法的根拠を持って警告・削除要請が可能になります。
ITセキュリティと情報権限の管理
退職者のアカウントや共有フォルダ、チャットツールのアクセス権限は速やかに停止します。
Googleドライブ、LINE、Chatworkなど、院内外で使うツールごとに退職時チェックリストを作成しておくと確実です。
口コミへの対応方針の策定
悪意ある口コミが投稿された場合、感情的に反論せず、事実確認と削除依頼を粛々と進めます。
Googleマップやエキテンなどの運営会社に対して、「事実と異なる内容」「名誉毀損・信用毀損に該当する恐れ」として削除申請を行うことが可能です。
場合によっては弁護士と連携し、投稿者特定の仮処分申立ても検討します。
退職時のトラブルは、スタッフ本人の感情と職場側の準備不足の両方から生まれます。
円満退職に導く面談体制、誓約書による明文化、そして院内の情報管理体制を整えることが、再発防止の鍵です。
トラブルが発生してしまった場合でも、焦らず事実関係を整理し、証拠を確保したうえで、弁護士や社労士に相談してください。
「退職者だからもう関係ない」と放置してしまうと、経営リスクは長期化します。
退職は終わりではなく、信頼関係を締めくくる最後の人事業務と捉えることが大切です。
医療(医科歯科)クリニック専門 特定社会保険労務士 鈴木教大
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