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歯科クリニックでは、限られた人数で診療・受付・助手・衛生士業務を回す必要があり、勤務シフトの組み方ひとつで現場の雰囲気や離職率が大きく変わります。特に多くのクリニックで相談を受けるのが「シフトの不公平感」によるトラブルです。
私自身、社労士として数多くの歯科医院をサポートしてきましたが、「なぜ自分ばかり遅番なのか」「土曜日や祝日にばかり勤務が当たっている」といった不満は、スタッフ間の人間関係を悪化させ、院長への信頼低下や離職の直接的な原因につながっていました。以下、実際にあったケースや改善のポイントを整理します。
ある都市部の歯科クリニックでは、院長が患者ニーズを重視し土曜日の診療枠を広げていました。すると「子育て中のスタッフ」よりも「独身スタッフ」に土曜シフトを多く割り当てる傾向が続き、次第に不公平感が蓄積。独身スタッフからは「自分たちが犠牲になっている」「待遇に見合わない」といった不満が噴出しました。
この結果、2名の衛生士が相次いで退職し、院長は急きょ求人に追われることとなりました。
別の地方クリニックでは、受付スタッフ3名のうち1名が常に遅番。理由は「家が近いから」という単純なものでした。最初は受け入れていたスタッフも、半年後には「負担が大きすぎる」と主張し、院長との面談でも感情的な対立が発生しました。結局、退職という形で終わってしまいました。
「希望休を出しても反映されない」という声も多いです。院長側から見ると、診療体制を維持するために希望通りにできない事情も理解できますが、スタッフにとっては「自分だけ希望が通らない」と感じることが積み重なると不信感につながります。
離職率の上昇:採用難の中でスタッフが辞めると、代替人員確保に多大なコストが発生。
職場の雰囲気悪化:シフトに対する不満はスタッフ間の対立を生み、協力体制を壊します。
患者対応への影響:雰囲気の悪さは患者にも伝わり、サービス低下や来院数減少につながることも。
「土曜勤務はスタッフ間で均等に割り振る」「遅番はローテーション制とする」など、シフト作成の基本ルールを就業規則や運用マニュアルに落とし込みます。明確なルールがあるだけで「院長の裁量で偏っている」という不信感を防げます。
「月2日まで考慮する」「繁忙期は希望に沿えない場合もある」など、事前に基準を示すことが大切です。希望が通らなかった場合も、その理由を丁寧に説明するだけで納得感は変わります。
院長や一部の古参スタッフに任せきりにせず、客観的なシフト管理システムを導入するのも有効です。最近では小規模クリニック向けに安価で使いやすいアプリも多く、スタッフ同士がシフトを見える化できることでトラブル防止につながります。
全員に均等に割り当てるだけが正解ではありません。子育て中や介護中のスタッフに配慮しつつ、その分を他スタッフに負担してもらう場合は手当や感謝の伝え方を工夫することが重要です。「負担が偏っているが、きちんと評価・補償されている」と感じられれば不満は軽減します。
勤務シフトは単なる事務作業ではなく、労務管理の根幹です。不公平感を放置すると、労使トラブルや離職につながり、結果的に院長自身の経営リスクとなります。
私が支援したあるクリニックでは、シフトルールを整備したうえで「毎月のシフト案をスタッフに公開→意見を受け付ける→最終決定」という流れを導入しました。その結果、不満の声が激減し、定着率も改善。小さな工夫ですが、経営に与える影響は大きいと実感しています。
デンタルクリニックにおける勤務シフトの不公平感は、スタッフの不満や離職を招く大きな要因です。
ルールの明文化
希望休の透明化
システム活用
柔軟性と補償のバランス
これらを意識することで、スタッフに安心感と納得感を与え、結果として患者サービスの向上にもつながります。
院長が「診療を回すために仕方ない」と思っていたシフトも、少しの工夫で大きく改善できます。公平感を意識したシフト管理こそが、安定した経営の第一歩です。
医療(医科歯科)クリニック専門
特定社会保険労務士 鈴木教大
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