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近年、政府が推進する「働き方改革」の流れの中で、副業・兼業を認める動きが広がっています。特に医療・歯科業界でも、スタッフのキャリア形成や収入補填のために副業・兼業を希望するケースが増加しています。
しかし、実際のデンタルクリニック現場では「副業・兼業を認めるかどうか」「認めた場合にどのような制限を設けるべきか」について混乱が生じ、トラブルにつながる例が少なくありません。私は社労士として、数多くのクリニックでその混乱に直面してきました。
ある中規模の歯科クリニックでは、歯科衛生士が他のクリニックで週1回だけ勤務していることが発覚しました。本人は「収入を少しでも増やしたい」との意図でしたが、院長としては「患者が流出するのではないか」「当院の診療方針やノウハウが他院に持ち出されるのではないか」と強い懸念を抱きました。
結果として、院長が一方的に「副業禁止」を口頭で指示しましたが、衛生士は「そんなルールは入職時に説明されていない」と反発。最終的には信頼関係が崩れ、退職に至ってしまいました。
別のクリニックでは、受付スタッフが夜間に飲食店でアルバイトをしていました。疲労から本業のクリニックでミスが多発し、また、労働時間を通算すると労基法上の週40時間を超過している可能性も浮上しました。クリニック側は「本業への影響がある」として注意しましたが、本人は「生活のためにやめられない」と主張。結果として労務トラブルが長期化しました。
さらに多くのクリニックでは、副業・兼業に関する明確なルールを就業規則に定めていません。厚生労働省のモデル就業規則が「原則副業・兼業を認める」方向に改正されたこともあり、院長が「全面禁止で大丈夫なのか」と不安を感じる一方で、実際には禁止条項を残したまま放置されているケースが多いのです。
このような曖昧な状態が、現場での混乱を招いています。
私が顧問先でアドバイスしているのは、単に「認めるか認めないか」ではなく、以下のような観点からルールを整備することです。
競業避止義務の明確化
同業他院での勤務や患者の引き抜き行為は厳禁とする。ただし、歯科業界以外での副業については柔軟に認める。
労働時間管理の徹底
他の勤務先を含めた通算労働時間を把握し、過重労働にならないよう注意する。
本業への影響防止
疲労や勤務態度への悪影響がある場合は制限をかける旨を規定する。
副業届出制の導入
副業・兼業を希望する場合は必ず事前に申請し、クリニック側が内容を確認できる仕組みをつくる。
情報漏洩防止条項の明記
患者情報や診療方針、経営上のノウハウを外部に持ち出すことを禁止し、違反時の懲戒処分を明確にする。
副業・兼業の扱いは、国の方針としては「認める方向」ですが、医療・歯科の現場においては競業リスク、労働時間の超過、患者対応の質低下など特有の問題が存在します。
クリニックが混乱を避けるためには、就業規則に副業・兼業に関する明確なルールを整備し、スタッフに丁寧に説明することが欠かせません。社労士としては、その設計と運用をサポートすることが、院長先生とスタッフ双方にとって安心できる職場づくりにつながると考えています。
医療(医科歯科)クリニック専門
特定社会保険労務士 鈴木教大
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