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多くのデンタルクリニックでは、スタッフ数が10名程度と小規模なことが多く、「就業規則の整備はまだ必要ない」と考えがちです。しかし実際には、労働基準法では常時10名以上の労働者を使用する事業場に就業規則の作成・届出義務が課されていますし、それ以下の規模であってもルールの明文化がなければ、労務トラブルが発生した際に院長やスタッフ双方にとって大きなリスクとなります。
私は社労士として、これまで複数の歯科医院から相談を受けてきましたが、就業規則未整備が原因で思わぬ紛争に発展したケースも少なくありません。
あるクリニックでは、受付スタッフが「診療終了後に片付けやレセプト処理をしている時間が残業なのか分からない」と訴えました。院長は「サービスの一環だから残業代は出ない」と説明しましたが、労働契約上は曖昧なままでした。
スタッフが労基署に相談。結果的に未払い残業代の支払いと是正勧告を受け、院長は大きな痛手を負いました。
別の歯科医院では、スタッフから「子どもの学校行事で休みたい」と有給休暇申請がありました。院長は「土曜は患者が多いので休まれると困る」と拒否しましたが、労働基準法上、有給休暇の取得を一方的に拒否することはできません。
就業規則に「有給休暇の取得申請は〇日前まで」「繁忙期における時季変更権の行使基準」などを定めておけば混乱は防げましたが、ルールがなかったため「院長の気分で休めるかどうかが決まる」という不満が噴出。結果的にスタッフ数名が離職につながってしまいました。
最近増えているのが、副業に関するトラブルです。あるクリニックでは、歯科衛生士が休日に別の歯科医院でパート勤務していたことが発覚。院長は「患者が流れるのでは」と強く叱責しました。しかし、就業規則に副業禁止の条項がなかったため、法的には制限できず、双方の関係が悪化。結果的に有力なスタッフを失ってしまいました。
副業に関しては「クリニックの業務に支障がない限り可」「同業他社での勤務は禁止」などのルールを定めておくことが重要です。
上記の事例から分かるように、就業規則がないことは以下のようなリスクにつながります。
法律違反による是正勧告や罰則
未払い賃金請求や労働審判に発展する可能性
スタッフ間の不公平感による離職
院長の裁量で運用されることによる不信感
特に歯科医院では、院長のリーダーシップが強く働く一方で、人事労務に専門知識が不足していることが多く、感覚的な判断がトラブルを招きやすいのです。
就業規則を単に作成するだけではなく、以下の点に留意することが必要です。
実態に合った規程作り
他院の雛形をそのまま流用するのではなく、自院の診療時間・スタッフ構成・休日体制に合わせて作成する。
スタッフへの周知徹底
作成後は必ずスタッフに説明会を行い、内容を理解してもらう。
定期的な見直し
法改正や診療体制の変化に応じて、最低でも3年に1度は見直しを行う。
専門家の関与
社労士が関与することで、法令遵守を確保しつつ、現場に即した規程を整備できる。
就業規則は「義務だから仕方なく作る書類」ではなく、クリニックを守り、スタッフの安心感を高めるための「経営ツール」です。特に歯科医院は少人数ゆえに、1人の不満が一気に組織全体に広がるリスクがあります。ルールを明文化し、公平で透明性のある職場環境を整えることが、定着率向上と安定経営につながるのです。
私はこれまで数多くの歯科クリニックで就業規則の整備をお手伝いしてきましたが、規則を整えたことでスタッフのモチベーションが向上し、離職が激減した例も少なくありません。今こそ、就業規則を「クリニック経営の礎」として位置づけることをおすすめします。
医療(医科歯科)クリニック専門
特定社会保険労務士 鈴木教大
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