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医療法人化後に生じやすい労務トラブルと社労士のサポートポイント

医療機関が医療法人へ移行すると、事業規模の拡大や役員構成の変化に伴い、労務管理の難易度が一段と高まります。内科・外科・小児科・整形外科・美容医療といった診療科別に特徴的なトラブルもあり、職員構成の多様化によって問題が顕在化するケースも少なくありません。私自身、医療法人化の直後に相談が急増する傾向を現場で強く感じており、法人化が「運営基盤の安定」と「労務リスクの増幅」の両面を持つことを実感しています。

以下では、医療法人化後に発生しやすい労務トラブルと、その際に社労士が果たすべき実務的サポートを専門的に解説します。

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【1】医療法人化によって増える労務トラブルの傾向
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医療法人化により「組織」としての色が強まり、労務管理の基準が曖昧なまま運営すると、以下のような問題が表面化します。

●院長と職員の距離感の変化
個人経営の時期は“家族経営的”にスムーズだったコミュニケーションが、法人化後は役員体制が整う中で遠慮が生まれ、意図が現場に伝わりにくくなることがあります。
その結果、「聞いていない」「説明がなかった」という不満が増えやすく、離職につながるケースも見られます。

●人事制度の不明確さ
医療法人化すると職員数が増え、管理職の設置や役職手当、評価制度が求められる局面が増えます。しかし制度構築が追いつかず、給与の妥当性や評価基準が曖昧なままとなると、「不公平感」が一気に高まります。

●勤怠管理の制度化
外科や整形外科、美容医療などは繁忙期の長時間勤務が常態化しやすいため、法人化後に勤怠管理の厳格化を求められ、スタッフ側との摩擦が生じることがあります。特に美容医療は歩合制度の導入で給与体系が複雑化しやすい点も注意が必要です。

●副業・兼業の増加
医師の働き方改革により副業・兼業の相談が増えており、夜間当直や他院出向の扱いが曖昧な場合、労働時間通算や安全配慮義務の問題が生じやすくなります。

私自身、院長とスタッフの感覚のズレが法人化直後に顕著になるケースを複数見てきました。「法人化したのに職場が変わった実感がない」という声や、「急に規律が厳しくなった」といった声が出やすく、ここを丁寧に整理することが重要です。

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【2】医療法人特有の労務課題
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●役員報酬と給与体系の線引き
医療法人では、理事長・理事・監事など役員の立場と、スタッフとしての労働者の位置づけを明確に区分する必要があります。特に、理事でありながら実務にも深く関わるケースでは、労働者性や社会保険の取り扱いを慎重に判断する必要があります。

●診療科による人員配置の違い
小児科は急な休みが多い特性、外科や整形外科は手術・リハビリ対応で長時間勤務になりやすい特性、美容医療は予約制のため残業が一気に偏る特性があります。それぞれの診療科の運営事情を理解した労務設計が不可欠です。

●ハラスメントの増加
組織が大きくなると役職者が増え、院長以外の管理職が現場を統率する場面も増えます。その結果、指導とパワハラの線引きが曖昧となり、苦情が増える傾向にあります。

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【3】社労士が提供すべき具体的サポートポイント
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医療法人化後は、単に法令遵守の指導だけでなく、組織運営に即した労務基盤の構築支援が求められます。以下は社労士として実務で特に重要と感じるポイントです。

●就業規則の全面見直し
法人化後は、組織構造・役職構成・診療科の特性を反映した規定整備が不可欠です。
特に、以下の項目は毎回見直しを提案しています。
・役職定義、管理監督者の基準
・手当の支給基準
・評価制度との整合
・副業・兼業規定
・美容医療での歩合制度の透明化

●評価制度と賃金制度の再構築
スタッフ数が20名を超える医療法人は、評価制度導入の効果が顕著です。
私の支援先でも、評価基準の導入で離職率が半減した例があり、制度の整備が組織の安定化に直結します。

●勤怠管理のクラウド化支援
医科の現場は突発的な残業やシフト変更が多いことから、クラウド勤怠システムの導入を強く推奨しています。特に美容外科・美容皮膚科はシフトと歩合が複雑なため、労務管理ソフトとの連携が効果を発揮します。

●管理職研修の実施
パワハラにならない指導方法や、勤怠管理の基本ルール、評価面談の進め方など、管理職の教育は労務トラブルを劇的に減らします。法人化後に最初に着手すべき領域の一つです。

●法人運営に合わせた助成金提案
職場環境改善、人材育成、勤務環境整備など、医療法人の課題に合う助成金の活用は有効です。制度を提案する際は、実際の運用を意識した計画が不可欠です。

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【4】社労士として感じる医療法人支援のポイント
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私が支援してきた医療法人では、法人化を機に「組織運営のプロセス化」が求められるケースがほとんどです。個人経営の頃は院長の判断で即決できたことが、法人化後はスタッフや役員間の調整が必要になり、情報共有の体制化が欠かせません。

また、医科の現場は診療科ごとの労務リスクが明確であり、画一的な制度では機能しにくいことも多くあります。そのため、診療科別の業務特性を踏まえた労務管理を提案することが、社労士としての大きな価値になると考えています。

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執筆:特定社会保険労務士 鈴木教大(社会保険労務士法人レクシード)

 

 

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