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医療機関における短時間勤務・段階的復職の導入と実務ポイント

医療現場では、メンタル不調・身体疾患・妊娠出産・家庭事情など、多様な理由で休職するスタッフが増えています。特に内科・外科・小児科・整形外科・美容医療といった専門性の高いクリニックでは、人手不足が慢性化し、復職者をいかに無理なく戻すかが経営継続の重要課題になっています。

そこで注目されているのが、短時間勤務制度と段階的復職(リワーク)の仕組みです。これらを適切に導入することで、復職の失敗による再休職を防ぐだけでなく、医療サービスの質を維持しながら人員配置を安定させることができます。今回は、社労士として医療機関を多数支援してきた立場から、その実務ポイントを整理します。


1 短時間勤務制度の基礎と医療機関での意義

短時間勤務は、通常の所定労働時間を短縮し、健康状態や家庭状況に応じて負担を軽減する仕組みです。特に外来数が多い内科や小児科では、朝のピーク時間帯に合わせた柔軟なシフト構成が可能となり、人員不足の緩和に役立ちます。

● 医療現場で多い「短時間ニーズ」

・妊娠・産後の体調不良
・整形領域で働くスタッフの腰痛や通院
・美容クリニック特有の長時間勤務による疲労蓄積
・メンタル不調からの復帰直後の負荷調整

私の支援先でも、時短に切り替えることで優秀な看護師が離職を回避できたケースが何度もあります。復職支援は「戦力維持」という経営的側面でも極めて重要です。


2 段階的復職(リワーク)の位置づけ

段階的復職とは、復帰初期は軽めの業務から始め、徐々に業務量や勤務時間を増やしていく方法です。特にメンタル不調から復帰するケースで効果的ですが、外科・整形領域のスタッフの術後復帰などにも応用できます。

● 段階的復職の基本ステップ

① 主治医の意見書(就業可能範囲の確認)
② 復職面談(院長・事務長・社労士)
③ 復職プラン作成(週〇時間→段階的に延長)
④ 定期フォロー(看護責任者と管理部門で確認)
⑤ 本格復帰の判定

特に医療現場では、復帰直後から通常業務を求められることが多く、これが再休職の要因になります。実務上は「業務切り出し」の設計が非常に重要です。


3 制度導入のための就業規則整備

短時間勤務・段階的復職を導入する際は、就業規則に根拠を設けることが不可欠です。以下は医療機関での実務ポイントです。

● 記載すべき項目

・対象者(休職後の復職者、妊娠・育児中の者など)
・短時間勤務の上限・下限
・段階的復職期間(通常は1~3か月)
・賃金の取り扱い(時間給化・固定給の調整など)
・社会保険の適用基準
・評価への反映方法

実務において、特にトラブルが多いのは「給与調整」と「社会保険加入要件」です。社労士としては、復職当初から保険適用条件を誤認したまま運用していたクリニックから相談を受けることも多く、導入段階の丁寧な設計が極めて重要と感じています。


4 医療機関における実務運用の注意点

● ① 外来ピークの時間帯に合わせる柔軟性

内科・小児科では朝の来院集中、美容クリニックでは夕方・土日の繁忙など、各科に応じたシフト設計が必須です。

● ② 業務切り分けの明確化

段階的復職では、以下のように業務レベルを段階分けするとスムーズです。
・レベル1:事務補助、備品管理、電話対応(短時間)
・レベル2:問診補助、簡易処置準備
・レベル3:通常業務の一部
・レベル4:全面復帰

これを可視化することで、現場の看護師長・院長の判断がぶれません。

● ③ 労働時間管理の徹底

短時間勤務は特に労働時間の端数調整が課題です。
勤怠管理システムの導入(KING OF TIMEなど)を併用することを強く推奨します。

● ④ 産休・育休明けのサポート

産後は短時間勤務と段階的復職を組み合わせることで、負担を軽減し復帰率を高めることができます。多くのクリニックで実際に効果を感じる部分です。


5 社労士として経験した成功事例

私が支援した整形外科クリニックでは、腰痛で長期休職したスタッフに対して「段階的復職+短時間勤務」を併用しました。
復職当初は2時間勤務から開始し、負荷を見ながら週ごとに延長。3か月後には完全復帰し、その後も安定して勤務できています。

美容クリニックでは、繁忙時間帯だけ勤務する短時間勤務を導入したことで、育児中の看護師が複数名復帰し、離職を防げた例があります。管理部門の負担も軽減され、経営的にも非常に有効な施策でした。


6 導入プロセスとクリニック側の体制づくり

医療機関では、以下のプロセスを整えることで復職支援の質が大きく向上します。

● 導入の流れ

① 院内での方針決定
② 就業規則・給与規程の整備
③ 復職プランのテンプレート作成
④ 管理者研修(看護師長・事務長向け)
⑤ 運用開始と定期フォロー

特に管理者研修は重要で、復職者の負担軽減のために周囲が適切に配慮しつつ、業務を滞らせないバランス感覚を身につけてもらう必要があります。


7 まとめ:復職支援は医療機関の人材戦略そのもの

短時間勤務や段階的復職は「制度導入が目的」ではなく、「継続就業を支えるための戦略」です。
医科クリニックでは特に、スタッフが退職すると採用難に直結するため、復職支援は最も費用対効果の高い人材投資と言えます。

医療機関の働き方を長期目線で支えていくためには、制度設計と運用の両輪が欠かせません。社労士としても、復職支援は今後ますます重要度が高まるテーマと感じています。


 

執筆:特定社会保険労務士 鈴木教大(社会保険労務士法人レクシード)

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