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院長夫人がスタッフ教育を担当する際に発生しやすい
パワーバランス問題と防止策

医科クリニックでは、院長夫人が現場教育やスタッフ管理に関与するケースが珍しくありません。特に内科・外科・小児科・整形外科・美容クリニックなど、院長の家族経営色が強い組織では、夫人が「教育係」としての役割を担うことで一定のメリットが生まれる一方、パワーバランスの偏りによるトラブルも頻発します。

社労士として、実際に医療機関の労務相談を受けていると、院長夫人の教育関与が発端となる職場トラブルは決して少なくありません。以下では、特に起こりやすい三つの問題点を整理し、その防止策を具体的に示していきます。


【1 指導の行き過ぎによる萎縮と離職リスク】

院長夫人による教育で最も多いのが、無意識の「指導過多」です。
夫人側としては「クリニックを良くしたい」という純粋な意図があっても、スタッフから見れば「院長の家族=絶対的な権力者」に見えます。

そのため、通常のリーダーが注意するよりも心理的負荷が大きく、同じ言葉でも「叱責された」と解釈されやすい傾向があります。

実際に私が支援した小児科クリニックでは、院長夫人が新人看護師に対し、接遇や親対応について細かくフィードバックしていたところ、本人が精神的に追い詰められ、入職3ヶ月で退職につながった事例がありました。夫人自身も「良かれと思って」の行動であったため、双方が不幸になる典型例です。

【防止策】
・教育担当者の「指導範囲」「言葉遣いのルール」を就業規則や院内ルールに明文化
・新人教育は段階的なチェックリストを用い、指導の頻度と内容に客観性を持たせる
・院長夫人の指導は「最終確認」や「接遇方針の伝達」など役割を限定
・フィードバックはスタッフリーダーと二人で行い、単独指導を避ける
・月1回のメンタルケア面談で、スタッフの負担を早期に把握

医科クリニックは人材の定着が最重要テーマであり、教育の負荷が離職につながる構造を断ち切る必要があります。


【2 役割の曖昧さによる指示系統の混乱】

院長夫人が教育を担う際、最も問題を生むのが「役割の曖昧化」です。
スタッフは誰の指示を優先すべきか分からず、現場で混乱が起きます。

よくある例が以下です。
・看護リーダーの指示と院長夫人の指示が食い違う
・院長が「こうしてほしい」と言い、夫人は別の指導を行う
・院長夫人が介入することで現場責任者の権威が失われる

この状態が続くと、現場のモチベーションは大きく低下します。私が支援した美容クリニックでは、看護リーダーが「結局すべて夫人が決めるなら意味がない」と感じ、管理職を降りたいと申し出たケースがありました。

【防止策】
・「夫人は教育方針の策定を担い、日常指導は現場リーダーが行う」など明確な役割分担を文書化
・指示権限表を作成し、誰が何を決めるのかを明確化
・院長夫人が現場判断に直接介入しないルールを設定
・週1回のリーダーミーティングで、教育方針のすり合わせを実施

医療現場は判断スピードが重要なため、指示系統の混乱は診療効率や安全性にも直結します。役割明確化は労務管理上の最優先項目です。


【3 院内の空気悪化と「身内忖度文化」の発生】

家族経営の医療機関では、院長夫人の発言が職場風土を大きく左右します。

スタッフは「身内には逆らえない」という意識を持ちやすく、以下のような空気が生まれます。
・指摘がしづらい
・夫人の機嫌を伺う
・意見が出なくなる
・表面的なコミュニケーションだけになる
・気疲れによる離職が増える

特に内科や外科などの多職種が関わる現場では、スタッフ間の連携が弱まり、診療プロセスのミスにもつながります。

私が労務改善を行った整形外科クリニックでは、スタッフが「夫人が来る日はピリピリする」と口をそろえて話し、職場の空気が慢性的に悪化していた例がありました。ヒアリングをした結果、夫人自身も理由を理解しておらず、単に業務チェックのために巡回していただけでした。

【防止策】
・夫人が現場に入る際は目的を明確化し、巡回回数もルール化
・スタッフの意見を集める「院内コミュニケーション面談」を定期的に実施
・第三者(社労士・事務長)が間に入り、苦情や意見の受け皿を作る
・院長夫人自身へのマネジメント研修を実施し、役割意識を整理

医療現場は感情労働が強いため、空気悪化は離職だけでなく、患者対応にも影響を与えます。経営者側がこのリスクを正面から理解する必要があります。


【まとめ:院長夫人の教育関与は「仕組み化」すれば強みになる】

院長夫人が教育に関与すること自体が問題ではありません。
問題は「属人的」「感覚的」に関与してしまうことです。

逆に、
・役割分担を明確にする
・指導方法を標準化する
・第三者の目線を入れる
ことで、夫人の強み(クリニック理念の浸透、接遇品質の統一、組織文化の安定)を最大限生かせます。

家族経営だからこそ、あえて「制度化」「中立性確保」が必要です。
社労士として多くの医療機関を支援する中で、ここを整備できた組織は例外なく定着率と診療品質が安定しています。


 

執筆:特定社会保険労務士 鈴木教大(社会保険労務士法人レクシード)

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