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小児特有の感染症流行に伴う急な欠勤対応ルールの最適化

小児を診療する医療機関では、季節ごとに異なる感染症の流行によってスタッフ自身や家族が影響を受け、急な欠勤が多発しやすい現場特性がある。特に小児科は、RSウイルス、ヒトメタニューモウイルス、手足口病、溶連菌、インフルエンザなど、年間を通じて流行が切れ目なく続くため、欠勤の頻度・期間・タイミングが読みづらい。こうした特性を踏まえた欠勤対応ルールの整備は、医療安全の確保や職場の安定運営に直結する重要な労務管理テーマである。

私は社労士として小児科・耳鼻科・内科を中心にサポートしているが、実務の中で「急な欠勤で受付と看護が崩壊寸前になる」「代替要員の判断基準が曖昧で院長と現場がギクシャクする」といった相談は少なくない。これらは事前のルール設計で大半が防げるため、日頃から欠勤対応のフローを institucionalize しておくことが肝要である。

【流行期に多発する欠勤の特徴を把握する】
まず、小児科で起こりやすい欠勤の“型”を整理することが労務管理上の出発点となる。子どもから感染しスタッフ本人が発症するケース、保育園や小学校からの呼び出しによる早退・欠勤、家族の看護が必要な発熱長期化、感染症による登園停止期間の延長など、多様なパターンが想定される。特に家族の看護による休みの場合は、法定の看護休暇制度が用いられることが多く、運用の齟齬がトラブルの火種になる。

医療機関の特徴として、診療内容によって必要な人員配置基準が異なるため、看護スタッフの欠勤は診療中止に直結するリスクがある。一方で受付・医療事務は代替要員確保の難易度が高く、急な欠勤が重なると電話対応・問診・会計がすべて滞留し、患者満足度が低下する。こうした部門ごとの脆弱性を可視化することは、欠勤対応ルールを作るうえで欠かせない。

【欠勤連絡のタイムラインを具体化する】
急な欠勤対応では、「いつ、誰に、何を」連絡するかが曖昧だと混乱が拡大しやすい。現場にヒアリングすると、欠勤連絡が院長の携帯に深夜に届き、そのまま共有されず朝の診療が始まるケースが多い。これは定型フローに落とし込むことで改善できる。
一般的に、下記のような連絡ルールを整備することが有効である。

・連絡期限:勤務開始◯時間前まで
・連絡先:院長ではなく、リーダーまたは事務長など中間管理者へ集約
・連絡内容:欠勤理由、見込まれる休日日数、発熱・感染の有無、家族の状況
・証明書:感染症の場合は医療機関の指示書を基準に復職可否を判断する

これにより、院長に負担が偏ることが避けられ、代替配置計画やシフト変更がスムーズになる。

【欠勤の理由ごとに対応方針を明確にする】
欠勤の理由によって、クリニックとして取るべき対応が異なる。小児科では特に次の三つが多い。

①スタッフ本人が感染した場合
②家族が感染し看護が必要な場合
③保育園・学校の登園停止により勤務が難しい場合

①の場合は、労働安全衛生法の観点から無理な出勤は避けさせ、復職基準を診療科のリスクに応じて定める必要がある。小児科は院内感染の影響が大きいため、一般内科よりも復職までの安全基準を慎重に設定するケースが多い。

②③は法律上の看護休暇が使える場面が多いが、中には制度理解が不十分で“欠勤控除”だけで処理してしまうクリニックも存在する。これではスタッフの不信感が蓄積し退職につながる。私は制度説明を院内研修で解説することを勧めており、看護休暇の運用ミスが消えるだけで職場の安定度が一気に向上することを経験している。

【代替要員の配置ルールを事前に決めておく】
欠勤対応で最も混乱しやすいのが「誰をどこへ動かすのか」という配置判断である。医療機関は業務の専門性が高く、急に配置転換ができない場面が多い。そのため、事前に代替要員の候補リストを作り、“何人欠勤したら外来を縮小するのか”“発熱外来を止める基準はどこか”を数値化しておくことが重要である。

看護と受付のどちらを優先させるかについて悩む院長も多いが、診療維持の優先度と医療安全リスクを踏まえ、組織としての意思決定基準を明文化しておくとトラブルが減る。

【シフト運用に柔軟性を持たせる制度設計】
小児科では、感染症流行期に人員が不足する前提で、平時からシフトに余白を作っておくことが望ましい。例えば、短時間パートの勤務時間延長依頼を事前合意する、子育てスタッフ同士が助け合えるよう調整枠を設ける、突発欠勤時の電話対応専任要員をローテーションで準備しておくなど、現場の生産性を維持する工夫が求められる。

さらに、シフト変更の依頼方法について、LINEではなくシステム管理画面での一元化を勧める。私は複数のクリニックで勤怠システム連動のシフト管理へ移行を支援してきたが、「確認漏れがなくなり、急な欠勤対応のストレスが激減した」との声が多い。

【欠勤が続くスタッフへのケアと評価制度の整合性】
突発欠勤が続くと、他のスタッフから不満が生まれることが多い。この状況に対し、感情論ではなく、評価制度や賃金体系との整合性で説明できる仕組み作りが不可欠である。欠勤頻度が高いスタッフの働き方を早期に見直し、勤務区分の変更(短時間勤務・曜日固定など)を提案することが、双方のストレス緩和につながる。

労務管理の観点では、状況把握面談や就業配慮の検討を行い、必要に応じて産業医へ意見を求めることも選択肢になる。小児科の現場は心身ともに負担が大きいため、早めの介入が離職防止に有効である。

【ルールを作るだけでなく、全員へ“周知”することが最重要】
どれほど整ったルールでも、現場に周知されていなければ機能しない。特に小児科はパート比率が高く、情報が伝わりにくい。私は院内掲示・チャットシステム・朝礼での月1アナウンスなど複数媒体で知らせる方法を提案している。周知の徹底こそが、急な欠勤が連発しても混乱しない職場の土台となる。

【まとめ】
小児特有の感染症流行は避けられないが、その影響を最小限に抑えるかどうかは、欠勤対応ルールの精度に大きく左右される。クリニックが事前に適切なフローと基準を整え、現場に共有することで、診療品質とスタッフの心理的安全性を同時に守ることができる。急な欠勤を“想定内の出来事”として扱える組織づくりが、小児科の持続的な運営には欠かせない。

 

執筆:特定社会保険労務士 鈴木教大(社会保険労務士法人レクシード)

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