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物療スタッフの事故防止と安全教育体系の構築について

物療部門では、温熱・電気・牽引など機器特性ごとに固有のリスクが存在し、スタッフの安全教育の質によって事故発生率が大きく変わります。医科クリニックにおいては看護部門と同じ感覚で運用されがちですが、物理療法機器は操作基準やモニタリング要件が専門的であるため、体系化された教育が不可欠です。社労士として現場支援を行う際も、教育体制の不備が労務トラブルや損害賠償リスクに発展した事例を複数見てきました。

【物療機器に特有のリスク構造を把握する】
電気刺激、超音波、レーザー、マイクロ波、温熱機器、牽引装置などは、いずれも療法効果が高い一方で使用条件を誤ると事故につながる危険性を持っています。たとえば電気刺激は禁忌の既往歴を確認していなかったことにより強い疼痛クレームが生じたケース、牽引装置では体位固定が不十分で転落しかけたケース、温熱機器では低温熱傷の発生など、いずれも教育とチェック体制があれば防げる事案です。

多くのクリニックで見受けられる問題は、看護スタッフや受付スタッフが兼務で物療業務を行っており、十分な専門教育を受けないまま運用している点です。医科の場合、リハビリ専門職が常駐しない規模のクリニックも多いため、院長の判断で現場に任されているケースが目立ちます。しかしこの運用は、事故発生時に「教育義務違反」「安全配慮義務違反」を問われやすく、使用者責任として重いリスクを抱えることになります。

【安全教育体系の基本設計】
まず重要なのは「機器ごとの標準操作手順(SOP)」の明文化です。メーカー説明書任せにするのではなく、院内の環境・患者層・スタッフ構成に合わせて、出力調整、禁忌確認、接触チェック、離床・離脱の条件などを細かく定めます。社労士として労務管理支援をする際、就業規則や業務マニュアルにこれらを位置づけておくと、責任分界が明確になりトラブル予防につながります。

次に、教育段階を三層にする体系が有効です。
初期教育:採用時、全機器の禁忌・危険性・緊急停止方法を必ず習得させる
実務教育:実際の施術での操作方法、患者観察ポイント、異常時対応
更新教育:新機器導入、事故報告のフィードバック、トラブル事例の共有

これらを半年から一年のサイクルで運用し、全スタッフの教育履歴を記録しておくことは、医療安全上はもちろん、万一の事故時の法的リスク低減にも大きく寄与します。

【事故防止のための実務的チェック体制】
物療スタッフが事故を起こす背景には、環境要因が複数あります。患者回転率が高く「急がなければならない」雰囲気がある、機器管理が属人的になり調整・点検の履歴が曖昧、禁忌事項の確認が患者任せになっている、などです。

クリニックが取るべき安全管理策は、以下のように整理できます。
問診票に物療機器の禁忌に関する専用項目を入れる
物療室のレイアウトを見直し、スタッフが常に患者の状態を確認できる動線にする
施術中離席を原則禁止し、どうしても離れる場合の交代ルールを定める
出力調整の初期設定値を全機器で統一し、個々のスタッフ判断に依存させない
異常時にはすぐに看護師または医師へエスカレーションできる体制を整備する

実際に私が支援したクリニックでは、牽引装置の施術中にスタッフが受付応援に呼ばれ、戻った際には患者が動いてしまい痛みを訴えたケースがありました。院内のコミュニケーションルールを見直し「中断禁止の作業リスト」を作成したことで、事故がゼロになった例があります。制度ではなく運用改善が事故防止に直結する良い例です。

【労務管理の視点からの注意点】
物療スタッフの教育体系づくりは、人事評価とも連動させると効果が上がります。教育参加、操作技術、患者対応、トラブル発生率などを評価項目に加えておくことで、標準化された行動を促すことができます。また、安全に関する懲戒基準も明示しておくと、スタッフ側の意識が変わります。

法的には、医療事故が発生した際、使用者責任が院長に及ぶ可能性が高く、教育義務違反が問われます。特に物療機器は「過失の立証が容易」な分野であり、カルテ記載や教育履歴が整っていない場合には責任が重くなります。社労士として事故後の対応に入った際にも、教育・記録・マニュアルが揃っていれば説明が可能になり、保険会社との協議もスムーズでした。

【まとめ】
物療スタッフの事故防止には、機器ごとのリスク特性を理解した教育体系と、標準化されたチェック体制が必要です。クリニック規模に関わらず、院長判断で現場任せにしないことが重要であり、教育履歴とマニュアル整備が労務リスク低減の柱になります。安全教育を継続的な運用として位置づけることで、医療の質と患者満足度の双方が向上します。

 

執筆:特定社会保険労務士 鈴木教大(社会保険労務士法人レクシード)

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