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外用指導や説明対応における
クレーム抑制

外用薬の使用説明は、医科クリニックにおいて患者対応クレームが最も発生しやすい領域の一つです。特に皮膚科や小児科では、塗布量や頻度、副作用の理解に個人差が大きく、些細な行き違いから「聞いていない」「説明が不十分だった」という不満に発展することが多く見られます。私自身、社労士としてクリニックの労務相談に関わる中で、外用薬指導の不備が契機となり受付スタッフへの苦情やトラブルにまで波及したケースを数多く見てきました。

こうしたクレームを抑制するためには、医療専門職による正確な説明と、スタッフ全体の説明内容の標準化が欠かせません。以下では、医科クリニックに特化した実務的な改善策を整理します。

【外用薬指導におけるクレーム発生の典型パターン】

クレームの大半は、①説明の不一致、②患者側の理解の不足、③副作用情報の伝達不足、に集約されます。同じ内容を説明しているつもりでも、医師、看護師、受付で微妙に表現が異なると患者は混乱します。また、塗布量の「適量」や使用回数の「1日数回」といった曖昧表現は、患者ごとに解釈差が生じ、トラブルの温床になります。

加えて、ステロイド外用薬のように誤った使用で健康被害が起こるリスクのある薬剤では、副作用説明が不足すると「そんなリスクは聞いていない」と不満を引き起こしやすくなります。これらは医療安全のみならず、労務管理の観点からもクリニックのブランドリスクにつながるため、組織的な改善が必須です。

【説明内容の標準化とスタッフ間の情報共有体制】

クレームを抑える最も効果的な方法は、説明内容の標準化です。診療科に応じて、よく処方される外用薬ごとに「統一説明シート」を作成し、誰が説明しても同じ情報が提供されるようにします。このシートには、

・使用量を図示した塗布量の目安
・1日あたりの具体的な使用回数
・使用タイミング(入浴後、就寝前など)
・想定される副作用とその対処
・来院基準(赤みが続く、痛みが強い等)

を明確に記載しておくと患者の理解が格段に向上します。

私の支援先でも、統一説明シート導入後に「言った/言わない」系のクレームが大幅に減少し、受付スタッフの心理負担も軽減されました。特に、スタッフの入れ替わりが多い小児科クリニックでは効果が顕著でした。

【受付スタッフの役割と説明境界線の明確化】

外用薬の説明は原則として医師または看護師の業務領域であり、受付スタッフが深く踏み込み過ぎるのはリスクがあります。しかし現場では、患者から「もう一度教えてほしい」「これで合っていますか」と確認されることも多く、受付が誤って補足説明をしてしまうケースが散見されます。

受付スタッフが説明してよい範囲と、医療職に必ずバトンタッチすべきラインを明確に定義することが求められます。例えば、

・受付が対応する範囲
 → 説明シートの再案内、使用回数やタイミングの確認、予約方法などの事務的説明

・医療職に引き継ぐべき内容
 → 薬の効果・副作用、症状の変化への判断、塗布方法の詳細に関する質問

この境界線を明文化し、新人研修に必ず組み込むことで、過失やクレームを防ぐことができます。

【説明プロセスにおける「ダブルチェック」運用】

説明内容の理解度を確保するためには、患者側から「復唱してもらう」プロセスが非常に有効です。例えば、「どのタイミングで使うか教えてください」「1回どれくらいの量を塗るイメージですか」と確認すると、誤解をその場で修正できます。

この復唱プロセスは、クレーム防止だけでなく、インシデント管理の観点からも高い効果があります。私の経験では、スタッフ教育において復唱確認を仕組み化したクリニックは、説明ミスに起因するトラブルがほぼゼロになっています。

【保護者対応の特有リスク(小児科の場合)】

小児科では、保護者の不安が高まりやすく、外用薬の使い方への質問が特に多く発生します。兄弟で症状が違う場合や、保育園で薬を使う必要があるケースでは説明が複雑化し、誤解も起きやすい傾向にあります。

そのため、保護者には「家庭での使用パターン別の具体例」を提示し、夜だけ使うケースや保育園への連絡方法などを明確に説明することが重要です。また、保育園側の判断基準を巡るトラブルも起きやすいため、必要に応じて使用証明書の活用を案内するとクレーム抑制につながります。

【記録の徹底と説明の証跡化】

説明内容は必ず電子カルテや看護記録に残し、誰がどのように案内したかを明確にしておくことが安全管理につながります。後日トラブルになった際の検証材料としても活用でき、スタッフの保全の意味でも有効です。

特にステロイド外用薬や処置と併用する薬剤の場合は、説明内容の簡易テンプレートを作成し記録漏れを防ぎます。記録の標準化は、労務リスク管理においても極めて重要です。

【スタッフ教育と定期的見直しの必要性】

説明内容の標準化と研修体系は、導入だけでは不十分で、定期的なレビューが不可欠です。新しい薬剤が増えたり、副作用情報が更新されたりするため、年に1回は説明シートと研修資料の見直しを行うべきです。

社労士として支援しているクリニックでは、毎月のミーティングで「最近受けた質問・苦情」を共有し、改善すべき説明ポイントを洗い出す運用を取り入れています。現場の声を反映させることで、説明の精度が高まり、クレームを未然に防ぐことにつながります。

【まとめ】

外用薬指導におけるクレーム抑制は、説明内容の明確化、標準化、記録、そしてスタッフ全体での共通理解が鍵となります。医科クリニックでは、患者特性や業務の繁忙度から説明トラブルが起きやすいため、組織的に仕組み化することで労務リスクを大きく軽減できます。現場スタッフの心理的負担を減らし、患者満足度の向上にもつながるため、全体最適を見据えた改善が重要です。

 

執筆:特定社会保険労務士 鈴木教大(社会保険労務士法人レクシード)

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