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繁忙期(乾燥・花粉シーズン)における短時間勤務導入の実務ポイント

乾燥・花粉シーズンは、耳鼻科・皮膚科・アレルギー科を中心に外来患者数が大幅に増加し、医療スタッフの負担が急激に高まる時期である。特に、受付・診療補助・会計・電話対応といった業務が同時多発的に増えるため、通常運営ではスタッフの心身負荷が一気に上昇し、離職やミス、クレーム対応の増加につながるケースを、私自身の顧問先でも多く見てきた。

こうした背景から、繁忙期限定で「短時間勤務」を柔軟に導入することは、人件費の最適化とスタッフの健康維持、業務品質の確保という観点で極めて有効である。本稿では、医科特有の繁忙期事情を踏まえつつ、短時間勤務導入の実務ポイントを解説する。


【繁忙期の特徴と労務上の課題】

医療機関における乾燥・花粉シーズンの特徴は、突発的に患者数が跳ね上がることである。通常期の1.3倍〜1.8倍の来院者が発生するケースも珍しくない。電話は鳴り続け、初診・再診の受付が重なり、検査説明や外用指導の時間も押す。短期的なストレスが蓄積し、スタッフの疲労が慢性化しやすい。

この時期は、スタッフが「残業が当たり前」という空気に飲み込まれやすい。だが、医療法上の人員配置基準、労働基準法上の労働時間管理のいずれを見ても、業務逼迫を理由に過度な残業を強いることは許容されない。むしろ、過重労働は医療安全上のリスクを増幅させる。

私は顧問先で、繁忙期に疲労が蓄積した受付スタッフが入力ミスを連発し、結果的にレセプト返戻が増加して現場の負担がさらに増える悪循環を何度も見てきた。短時間勤務の導入は、この連鎖を断ち切るための重要な施策である。


【短時間勤務を導入する労務上の意義】

短時間勤務は、育児・介護といった法定制度だけでなく、就業規則や労使協定によって独自制度として設計することが可能である。繁忙期限定の短時間勤務を設けることで、以下の効果が期待できる。

・ピーク時間帯の人員を厚くする
・スタッフの出勤調整をしやすくする
・体力的負荷を軽減し離職防止につなげる
・人的余力を確保し医療安全を守る

実際に耳鼻科クリニックの顧問先では、繁忙期の午前診だけ「短時間勤務のスポット枠」を設定し、子育て中のパートスタッフが無理なく参加できるようにした結果、患者対応の待ち時間が短縮し、残業もほぼゼロになった。


【繁忙期短時間勤務の制度設計ポイント】

制度設計では、以下の三つの観点が重要となる。

  1. 目的の明確化
    繁忙期の業務量増加に対応するための制度であり、単なる労働時間短縮ではないことを明示する。目的を曖昧にすると、制度が誤用され不公平感が生まれやすい。

  2. 対象範囲
    ・パートスタッフ
    ・繁忙期のみ勤務可能なスポット人材
    ・固定時間で働きたいスタッフ
    など、実際の人員構成に応じて柔軟に定めることが望ましい。

  3. 労働条件の明記
    ・短時間勤務の実施期間
    ・出勤時間帯の指定の可否
    ・時給・手当の取り扱い
    ・出勤希望調整の方法
    これらは就業規則または付帯文書として必ず文書化する必要がある。


【短時間勤務導入時の実務運用】

制度を整備しただけでは十分ではない。運用にはいくつかの注意点がある。

・シフト作成は医療機関の繁忙予測に基づき早期に行う
・朝イチの受付・電話が重なる時間帯に重点配置する
・業務量が多い日(例えば曜日特性)を分析して配置を強化
・業務の属人化を避け、教育計画と連動させる
・短時間勤務スタッフにも医療安全教育を必ず実施

特に、短時間スタッフの教育不足は医療機関では重大なリスクにつながる。外用説明の誤りや受付案内の齟齬は患者トラブルに直結するため、最低限の標準化教育は欠かせない。


【顧問先での実践例】

ある皮膚科では、繁忙期に「1日2時間だけ勤務したい」という希望を持つ元スタッフを短時間勤務枠として再雇用した。結果、ピーク時間帯の案内・電話対応がスムーズになり、常勤スタッフの負担が大幅に軽減。常勤者の残業削減に加え、退職検討者が思い直したというケースもある。

このようなスポット勤務は、医療業界においては特に機能しやすい。業務が分業化しているため、短時間でも必要な役割を明確に設定しやすいからである。私自身、複数のクリニックで「必要な時間に必要な人数を配置する」だけで現場が劇的に改善した例を見てきた。


【短時間勤務導入は定着率と医療品質を高める】

繁忙期に無理な長時間勤務を強いると、離職、ミス、クレームという負のスパイラルが加速する。一方で短時間勤務を導入し、必要な時間帯に必要なスタッフを確保できれば、受付の混乱は減り、待ち時間も短縮され、医療サービスの質が向上する。

医療機関では、患者満足度の低下が評判に直結する。短時間勤務の導入は、スタッフを守りながら、患者サービスの品質を維持するための戦略的な労務管理である。


 

執筆:特定社会保険労務士 鈴木教大(社会保険労務士法人レクシード)

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