〒322-0039 栃木県鹿沼市東末広町1940-12(鹿沼駅から徒歩5分/駐車場:あり)
受付時間
耳鼻咽喉科は、医科の中でも季節変動の影響を最も強く受ける診療科である。花粉症が重なる春先、ウイルス性疾患が増える秋冬、急性中耳炎が多い小児患者の多い時期など、年間を通して複数の繁忙ピークが存在する。待ち時間対策、導線整理、検査対応、診療補助など業務範囲が広いこともあり、固定的な勤務体制ではスタッフの負荷が急上昇しやすい。私は耳鼻科の労務相談を受ける中で、短時間勤務と交代制シフトの組み合わせが繁忙期の現場を安定させる最も効果的な手法だと感じている。本稿では、耳鼻咽喉科に特化したシフト設計の実務ポイントを整理する。
【耳鼻咽喉科の季節繁忙の特徴】
耳鼻科の繁忙期は極めて明確である。
・2〜4月:花粉症患者が急増し、導線・受付が混雑
・10〜1月:風邪・ウイルス感染による鼻症状・咽頭痛の患者増
・小児の急性中耳炎の流行期:突発的な来院が多い
特に花粉シーズンは、午前中の受付から既に混雑し、検査(吸入、ネブライザー、聴力検査)も重なるため、スタッフの疲労が蓄積しやすい。このため、時間帯別に人員を最適化する設計が必要となる。
【短時間勤務者の配置が耳鼻科と相性の良い理由】
耳鼻科は、定型業務と専門性が要求される業務が明確に分かれているため、短時間勤務者を活用しやすい。
具体的には、以下のような業務は短時間スタッフが即戦力化しやすい。
・受付誘導、問診票配布、患者案内
・検査前の準備作業(カルテ準備、器具補充)
・ネブライザー誘導と後片付け
・混雑時の導線整理と声掛け
一方、聴力検査や処置の補助、院長の診療アシストなど、専門性が必要な業務は常勤スタッフが担う。短時間勤務者を「繁忙時間帯の支援要員」として固定配置することで、現場全体の動きが滑らかになる。
私の支援先の耳鼻科でも、花粉シーズンだけ午前の短時間勤務者を1名増員したところ、受付の滞留が大幅に改善し、常勤スタッフの残業もほぼゼロになった。
【交代制シフトの導入ポイント(耳鼻科特化)】
耳鼻科では、診療開始から午前のピークまでの負荷が非常に高いため、早番・中番・遅番の3区分による交代制が有効である。
・早番:受付準備、消毒、ネブライザー準備、最初の導線整理
・中番:患者数のピークに合わせて最大稼働
・遅番:検査片付け、夕方の急患対応、翌日の準備
特に早番の存在は重要で、開院直後の混雑を抑えるための役割を担う。繁忙期は早番を厚めに配置し、中番で患者のピークをしっかり支える体制が望ましい。
また、耳鼻科特有の「検査ごとの担当分け」がシフト設計の要となる。
・吸入担当
・聴力検査担当
・診療補助担当
・受付/会計担当
これを週単位・日単位で公平にローテーションすることで、業務の偏りを防ぎ、スタッフの専門性も育ちやすくなる。
【負荷分散のための時間帯別シフト最適化】
耳鼻科の繁忙時間帯は以下の通りである。
・9:00〜12:00:最繁忙
・16:00〜18:00:仕事帰りや保育園帰りの受診で混雑
・昼休憩後の検査予約枠が詰まりやすいクリニックもある
この特性に合わせて、次のようなシフト組みが効果的である。
・早番(8:15〜12:15)
・中番(9:00〜17:00)
・遅番(10:00〜19:00)
・午前のみ短時間(8:45〜12:30)
・夕方短時間(16:00〜19:00)
短時間勤務を午前か夕方に限定することで、繁忙帯の戦力が安定し、常勤スタッフが長時間労働に陥らない。
【労働時間管理と法令遵守】
耳鼻科は患者数の波が大きいため、繁忙期は残業が発生しやすい。以下のようなリスクに注意する必要がある。
・早番と遅番の間の勤務間インターバル不足
・短時間スタッフの社会保険加入要件への到達
・シフト変更の口頭依頼によるトラブル
・繁忙期の36協定の限度時間超過
実務上は、クラウド勤怠でのリアルタイム管理、早番・遅番の固定ルール化、緊急時の代替要員の事前登録などが有効である。
【繁忙期のストレスを抑えるコミュニケーション設計】
耳鼻科は患者数の増減が激しく、ストレス要因が多い。特に花粉症シーズンはスタッフの疲労が顕著で、「誰だけが忙しい」という不満が起きやすい。
以下の施策が効果的である。
・早番・遅番の担当回数を月次で見える化
・検査担当ローテーションの公平性を明示
・繁忙期だけの臨時配置ルールを作る
・新人フォロー担当を決め、指示が錯綜しないようにする
私の支援した耳鼻科では、ローテーションを数値化して共有したことで不満が激減し、離職率も改善した。
【耳鼻咽喉科が導入すべき最適シフトのまとめ】
耳鼻科の繁忙は予測しやすい反面、ピーク時の負荷が非常に高い。短時間勤務と交代制シフトを戦略的に組み合わせることで、次の効果が得られる。
・待ち時間の短縮
・残業の削減
・専門業務への集中
・スタッフ定着率の向上
・患者満足度の向上
業務の分配と時間帯の最適化が鍵であり、耳鼻科の労務管理において最も効果が出やすい取り組みだと感じている。
執筆:特定社会保険労務士 鈴木教大(社会保険労務士法人レクシード)
お電話でのお問合せ・相談予約
<受付時間>
9:00~17:00
※土曜日・日曜日・祝日は除く
フォームは24時間受付中です。お気軽にご連絡ください。