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患者特性に応じたハラスメント・暴言リスク対策(精神科・心療内科)

精神科・心療内科は、他科に比べて患者属性の幅が広く、情緒不安定さや認知の偏りが原因となる暴言・威圧行為が発生しやすい領域である。現場スタッフは受診調整、問診、会計業務などで患者と直接向き合うため、精神的負荷が蓄積しやすく、労務的観点でも早期から組織的なリスク管理が求められる。

私自身、精神科クリニックの労務顧問を担当する中で、スタッフから「ただ対応しただけなのに突然怒鳴られた」「予約枠の説明をしただけで攻撃的な態度に変わった」といった相談を頻繁に受ける。これらはスタッフ教育だけでは解決できず、院内体制そのものを整備する必要があると感じてきた。

【患者特性に基づくリスクの可視化】

精神科・心療内科では、患者特性を大きく三つの類型で捉えると対策が立てやすい。

一つ目は、情緒不安定型で、些細な待ち時間や言い回しに反応しやすく、感情の高ぶりが暴言に転じるケースである。二つ目は、認知のゆがみによる誤解型で、事実の説明をしても「自分だけ扱いが悪い」と受け取られる場合がある。三つ目は、依存傾向の強さに起因する要求過多型で、予約外受診や医師への強い接触要求として現れることが多い。

こうした特性は、個別のスタッフの力量で対応しきれるものではなく、構造的なリスクとして管理すべきものである。

【受付・問診段階のハラスメント抑制策】

特に受付・問診部門は、患者の初期反応が最も強く出やすい場面であり、負荷軽減策が重要となる。

まず、説明内容の標準化である。受付スタッフが患者ごとに対応内容を変えてしまうと、「前回と言っていることが違う」と不信感につながりやすい。説明の統一は、心理的安全性の確保に直結する。

次に、境界線を明確にするルール整備だ。暴言や執拗な要求がある場合、「一定のラインを超える行為は対応を中止する」という判断基準を就業規則や院内マニュアルに明文化することで、スタッフが迷わず対応できる。私の顧問先でも、基準を明文化したことで、無用な我慢が減り、退職率の改善につながった。

また、席の配置やパーテーションの活用といった動線設計も効果がある。スタッフを囲むような対面配置を避けるだけでも、圧迫感を軽減できる。

【医師・看護師の診療サイドにおけるリスク低減】

診療現場でも、説明が長引きやすい患者や不安が強い患者に対して、伝えるべき範囲を明確化することが重要だ。医師・看護師が過度に丁寧になりすぎると、逆に特定患者の依存を招きやすく、結果として暴言やクレームの温床になり得る。

そのため、説明内容のテンプレート化や、医師と看護師の役割分担の明確化が必要となる。例えば、「薬剤の詳細説明は医師が行うが、生活指導は看護師が行う」という整理をするだけで、患者との関係線引きが明確になる。

【スタッフ保護のためのマニュアルとエスカレーション体制】

精神科・心療内科では、現場判断に委ねると対応差が生まれ、スタッフのメンタル負荷が高まりやすい。したがって、院内マニュアルの整備は必須である。

マニュアル整備のポイントは次の三つだ。

一つ目は、暴言・威圧行為の定義を明示すること。「どこからがNGか」が明確になることで、スタッフが躊躇なく報告できる。

二つ目は、対応手順の明文化である。初期対応→管理者へ引き継ぎ→医師判断というエスカレーションルートを明記することで、スタッフ一人に責任が集中しない。

三つ目は、記録化の徹底だ。暴言・威圧行為は、瞬間的な感情で終わることもあれば、継続的な行為に発展することもある。記録があれば、医師の判断や今後の診療調整にも活用できる。

私が支援してきたクリニックでも、記録テンプレートを導入したことで、再現性のあるリスク管理ができるようになった。

【スタッフの心理的安全性確保と教育体系】

精神科・心療内科で働くスタッフは、患者対応の特性上、一定の心理的負荷を避けられない。したがって、現場支援型の教育体系とフォロー体制が不可欠である。

まず、ロールプレイ研修の導入である。突然の怒号や理不尽な要求に対し、受け流し方や一時対応の型を練習することで、実場面での精神的負担が大きく軽減される。

次に、管理者による定期的な面談を必ず設けることだ。暴言や不安訴えは、スタッフの自己責任ではなく業務特性によるものと位置づけ、相談しやすい環境をつくることが重要である。

また、暴言が一定回数以上発生した患者への受診制限や診療内容調整も、医療安全の観点から検討すべきだ。実際、私の顧問先でも「診療継続に支障がある患者への医師判断ルール」を整備することで、スタッフ負担が大きく減った。

【総括】

精神科・心療内科の現場では、患者特性が原因となる暴言や攻撃的行動を完全に防ぐことはできない。しかし、患者特性を前提にしたリスク管理、境界線の明確化、マニュアル整備、スタッフ保護の仕組みづくりにより、現場負荷を大幅に軽減することは可能である。

スタッフを守る視点を労務管理の中心に据えることが、結果として診療の質向上にもつながる。

 

執筆:特定社会保険労務士 鈴木教大(社会保険労務士法人レクシード)

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