〒322-0039 栃木県鹿沼市東末広町1940-12(鹿沼駅から徒歩5分/駐車場:あり)

受付時間

9:00~17:00
定休日:土曜日・日曜日・祝日

お気軽にお問合せ・ご相談ください

0289-77-7011

男性医師×女性スタッフ構成で起こりやすい誤解・ハラ対策(婦人科)

婦人科クリニックでは、歴史的な背景や医師の性別構成の偏りから「男性医師×女性スタッフ」の組織構造が一般的である。患者のプライバシー配慮が最優先となる診療科である一方、院内のコミュニケーションや指揮命令の伝達に微妙な温度差が生じやすく、その「すれ違い」から不必要な誤解やハラスメント申告につながることが少なくない。実際、私が社労士として支援している婦人科では、コミュニケーションの癖が異なるために本来は些細な事務連絡であっても、スタッフ側が「威圧的」と感じてしまい、関係がぎくしゃくするケースが多い。婦人科という診療特性ゆえに、スタッフの心理的安全性が揺らぐと診療オペレーション全体に影響するため、経営側には事前の制度設計と教育が不可欠である。

【男性医師と女性スタッフ間で起こりやすい誤解の特徴】

第一に、業務指示の「端的さ」が誤解を生む。男性医師は多忙な外来の中で、できる限り簡潔に指示を出そうとする。しかし、この端的な表現が女性スタッフにとっては「冷たい」「突き放された」と映り、心理的緊張を引き起こすことがある。婦人科では患者との対話業務が多く、スタッフ自身が丁寧なコミュニケーションを職業習慣としているため、温度差が生じやすい。

第二に、診療中の接触場面に関する「認識差」もトラブルの温床となる。もちろん医療行為に必要な接触であるが、婦人科スタッフは患者対応で常に細かな気遣いを求められ、自身も敏感になりやすい。医師側は「いつもの診療行為」として認識していても、スタッフ側は「一歩間違えばセクハラになりかねない」と感じるケースがあるため、職場全体で共通認識を持つ仕組みが不可欠である。

第三に、患者からのクレームを受けた際の「責任の所在」に関するズレである。婦人科ではデリケートな相談が多く、患者が感情的になりやすい場面も多い。医師が患者対応後に短いコメントだけスタッフへ伝えると、スタッフ側は「責任を押し付けられている」と誤解してしまうこともある。

【ハラスメントに発展しやすい具体的なリスク要素】

私が実務で多く見てきた中で、ハラスメントに発展しやすい典型パターンは次の通りである。

・忙しい時間帯に「早くして」「なんでできてないの」といった短い叱責
・スタッフとの距離が近い診察室動線での不用意な立ち位置
・スタッフの体調不良申し出に対し、「大したことない」「耐えて」と言ってしまう
・患者の前でスタッフのミスを指摘する
・プライバシー性の高い婦人科業務への理解不足からくる心理的負担軽視

これらはハラスメントの意図がなくても、一度スタッフが「嫌悪感」や「不公平感」を抱くと申告に繋がりやすい。特に婦人科では「女性特有の体調」「感情負荷」「性的な文脈」が重なり、一般診療科よりもトラブルが顕在化しやすい。

【誤解・ハラスメントを防ぐための組織的対策】

ポイントは、個々の振る舞いを注意するだけでは不十分であり、「組織として再現性のある仕組み」を持つことである。

一つ目は、指揮命令系統の明確化である。実務上、院長と婦人科スタッフの距離が近い分、指示系統が曖昧になりがちだ。私は就業規則と業務マニュアルの双方に、医師・看護師・事務スタッフの指示権限を明記することを推奨している。特に医師からスタッフへの指示は「診療行為に必要な範囲」と「診療外の業務」に区別し、スタッフ側が迷わない運用が重要となる。

二つ目は、医療安全とハラスメント研修を「婦人科仕様」にカスタマイズすることである。一般的な研修資料では婦人科特有の接触・説明・動線が前提になっていないため、現場に落とし込めない。私が支援した婦人科では、医師の指示出し動画をスタッフ教育に組み込み、「この言い回しなら誤解されない」という具体例を蓄積し、成果を上げている。

三つ目は、スタッフの心理的負荷を定期的に測定する仕組みを置くことだ。婦人科は感情労働が大きく、毎月の衛生委員会や定期面談を通じて、スタッフがどの部分で負担を感じているかを可視化し、組織的にフォローする必要がある。

【男性医師側のコミュニケーション改善ポイント】

医師側の意識改善は極めて重要である。婦人科は患者の多くがデリケートな悩みを抱えて来院するため、スタッフも同様に高い共感力を求められる。そのため、医師側に対しては次のコミュニケーションルールを推奨している。

・業務指示は「根拠+目的」を付けて伝える
・短い言葉になるときこそ、語気を柔らかくする
・感情的な表現を使わず、事実ベースで伝える
・スタッフの前で患者対応を批判しない
・忙しい時間帯ほど、最初に「ありがとう」「助かるよ」と言葉を添える

医師の言動は職場文化を左右するため、事実上の「リーダー教育」としての位置づけが必要である。

【女性スタッフ側に必要な理解】

一方で、スタッフが医師の業務特性を理解することも欠かせない。医師は分単位で診察を回す高度な業務負荷の中で判断しており、全ての言葉に丁寧さを求めるのは現実的でない場合も多い。そこで私はスタッフ研修において「医師の業務負荷を可視化したシミュレーション」を取り入れている。医師の立場を体験することで、指示の端的さや行動速度の理由が理解され、誤解が減少する効果がある。

【クリニック全体で実現すべき運用】

最後に、婦人科特有の環境を踏まえた全体最適の運用をまとめる。

・診察室の立ち位置や接触場面のルール化
・指示の伝達方法を口頭+電子ツールで二重化
・患者クレーム発生時の責任の分担と報告ルートの明文化
・個人依存を避けるためのマニュアル整備
・院長とスタッフ双方の相談ルートを複線化

これらを制度として整えることで、誤解やハラスメントリスクは大幅に低減する。婦人科は患者からの信頼形成が何より重要であるため、職場内のコミュニケーションの質が診療品質に直結する。組織としての努力は、結果的に患者満足度にもつながる。

 

執筆:特定社会保険労務士 鈴木教大(社会保険労務士法人レクシード)

お気軽にお問合せ・ご相談ください

お電話でのお問合せ・ご相談はこちら
0289-77-7011
受付時間
9:00~17:00
定休日
土曜日・日曜日・祝日

お気軽にお問合せください

お電話でのお問合せ・相談予約

0289-77-7011

<受付時間>
9:00~17:00
※土曜日・日曜日・祝日は除く

フォームは24時間受付中です。お気軽にご連絡ください。

社会保険労務士法人
レクシード

住所

〒322-0039 栃木県鹿沼市東末広町1940-12

アクセス

鹿沼駅から徒歩5分/駐車場:あり

受付時間

9:00~17:00

定休日

土曜日・日曜日・祝日