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急患対応に伴う緊急呼び出しルール設計(脳神経外科・外来型)

外来型の脳神経外科クリニックでは、救急搬送を常時受け入れる病院と異なり、急患が発生する頻度は高くないものの、一度発生するとスタッフの動線や医師の対応可否が経営と安全に直結する。特に、頭痛急変、めまい、意識レベル低下、外傷などは「すぐに医師の判断が必要だが、院内リソースが限られる」という特徴がある。そのため、クリニックとしては「急患受入の範囲」と「緊急呼び出しの基準」を事前に明文化し、院内の負荷と法的リスクを最小限に抑える運用が欠かせない。

ここでは、社労士として医科クリニックの労務管理を多数支援してきた経験を踏まえ、実務的な設計ポイントを整理する。

【急患対応の範囲設定とリスク評価】

まず重要なのは、「急患をどこまで受け入れるか」をクリニックとして決めることである。脳神経外科では、専門特性上、患者や地域住民から「脳関連はすぐ診てくれる」という期待が強い。しかし、外来型診療所は設備面、人員面で限界があるため、「当院で対応可能な急患範囲」を事前に定義することが安全配慮にもつながる。

例えば、次のような範囲設定が現場では多い。

・軽度の頭痛発作、めまい、顔面神経症状は受入可
・意識低下、重度外傷、急性麻痺などは救急要請を優先
・CT撮影が診断の前提となる症状は原則受入可
・発症時間からの経過が明確でない脳卒中疑いは救急病院へ連携

範囲設定を曖昧にすると、受付スタッフが判断に困り、院長が毎回呼び出される体制が固定化してしまう。社労士として現場を見ていると、「最終判断者の明確化」と「受入範囲の文書化」がないクリニックほど、スタッフ依存の運用となり、勤務外呼び出しが慢性化しやすい。

【緊急呼び出し基準の明文化】

急患対応において、呼び出し基準が最も重要な労務管理要素となる。特に外来型の脳神経外科では、常勤医が1名というケースが多く、呼び出しが勤務時間外に集中すると、過重労働や安全配慮義務リスクが発生する。

明文化すべきポイントは次の通りである。

・呼び出しの判断者(受付、看護師、在院医師)
・呼び出しが必要な症状分類
・呼び出しの優先度(至急/優先/判断保留)
・呼び出し手段(直電、アプリ、院内システム)
・呼び出し後の対応時間の目安
・来院までの院内処置可否の判断基準

社労士として複数院から相談を受ける中でも、「呼び出し優先度の分類」は特に効果がある。例えば、

至急:意識低下、急激な麻痺、重度外傷
優先:症状悪化の可能性が高い頭痛やめまい
保留:生活相談、慢性症状の訴えで急性増悪なし

この三段階があるだけで、スタッフが迷わないため呼び出し数が減り、医師の負担も安定する。

【勤務時間外呼び出しの労務管理】

急患対応は、労務管理上「緊急対応手当」「拘束時間の扱い」「オンコール制度」の整理が欠かせない。外来型脳神経外科では、夜間・休日の呼び出し頻度が病院ほど多くないため「オンコール手当の金額感」をどうするかが経営判断となる。

一般的には次のような組み立てが多い。

・オンコール手当(固定)+出勤時の時間外割増
・呼び出し回数に応じた追加手当
・自宅待機時間は「手待時間」に近い扱いのため、拘束度に応じた手当額を決定

社労士としては、オンコール制度を導入する場合、最低限以下の点を就業規則に反映させることを推奨している。

・呼び出し対象者の範囲
・待機中の行動制限の程度
・出勤要請があった場合の割増賃金
・不在時の代替対応手順
・待機拒否が許容される条件

やや専門的な話となるが、過去に脳神経外科クリニックであった相談として、「自宅で待機していたが自由に外出ができないため勤務時間ではないか」というものがある。これは「拘束の程度」で判断され、結論としては手待時間に近いため労働時間までは該当しなかったが、ルールが曖昧であるほど労使トラブルの火種になりやすい。

【急患時の院内オペレーション標準化】

急患が来院した際、院内オペレーションが統一されていれば呼び出し基準もブレない。脳神経外科では、受付の初期判断と看護師の観察が非常に重要であり、標準化の有無が緊急性の把握を左右する。

主な標準化ポイントは次のとおりである。

・来院時のトリアージ手順
・バイタル測定と意識レベルの初期チェック
・CT撮影までの動線と時間管理
・医師到着までの看護師判断基準
・家族説明に関する役割分担

社労士として院内体制の改善支援を行う中で、スタッフ教育の偏りが急患対応の品質に影響するケースを何度も見てきた。特に新人看護師が多いクリニックでは、経験者との差が大きく、「緊急度の判断を院長に丸投げ」する傾向が強い。これは呼び出し過多の原因となるため、教育体系として最低限の観察ポイントを明文化することが効果的だった。

【外部医療機関との連携強化】

外来型脳神経外科の急患対応では、クリニック単独で完結できる範囲が限られているため、近隣の救急病院とのルート整備が不可欠である。特に、脳卒中センターや高度救急の病院とは、以下の連絡体制を作っておくと呼び出し判断が安定する。

・紹介基準の共有
・画像共有システムの活用
・救急搬送時のチェックリスト
・夜間連携先の代替候補リスト

連携体制があるほど、スタッフが「迷う時間」が減るため、結果として院長呼び出しが減少するという効果もある。

【まとめ】

急患対応の緊急呼び出しルール設計は、単なるマニュアル作りではなく、労務管理・医療安全・経営効率を同時に整える重要なプロセスである。外来型脳神経外科は、専門性の高さゆえに患者からの期待も大きく、緊急対応がスタッフ教育や医師負担に直結する。呼び出し基準の明確化、オンコール制度の整備、外部連携の強化という三つの柱を軸に、院内全体で統一された運用を構築することが、結果として医療の質向上とスタッフの働きやすさの両立につながる。

 

執筆:特定社会保険労務士 鈴木教大(社会保険労務士法人レクシード)

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