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脳神経外科は、加齢に伴う疾患を抱える患者が多く、外来における転倒リスクや認知機能低下による予測不能な行動が日常的に発生する。その結果、スタッフが巻き込まれる事故や、対応時の身体的・心理的負荷が高まりやすい。私自身、社労士として医科クリニックを支援する中で「患者対応の負荷が労務問題化している」相談を受けることが増加している。特に脳神経外科では、身体介助や誘導が業務の一部に組み込まれ、スタッフの安全確保を制度的に設計する必要性が高いと感じている。
第一に、転倒誘発場面に関するリスクの可視化である。高齢患者は歩行能力が不安定で、杖や歩行器の扱いにも個人差がある。外来動線で「一度立ち止まるポイント」を設計し、スタッフが無理なく同行できる環境づくりが不可欠である。例えば受付から診察室までの距離が長いクリニックでは、中間地点に待機スペースを設置し、スタッフが「伴走対応」の必要性を判断できるようにする。また、床材の選定や段差解消など、ハード面の改善も効果的である。
次に、介助対応のルール化が欠かせない。脳神経外科外来では、患者の理解力や判断力が落ちているケースが多く、スタッフが一人で対応し過負荷になる場面が多い。介助の必要性を受付段階で把握し、院内で共有する仕組みを設けることが重要だ。特に女性スタッフからは「急に腕を掴まれる」「体重を預けられ危険を感じる」といった相談が寄せられることがある。これらはハラスメント防止だけでなく職場の安全配慮義務としても重大なテーマである。
また、緊急時のバックアップ体制を整えることも求められる。脳神経外科では意識混濁や急変リスクを抱える患者が来院するため、スタッフが一人で対応する体制自体が危険である。急変時の行動マニュアルを策定し、毎年の安全教育に組み込むことが望ましい。実際に支援しているクリニックでは「スタッフ二名体制での移動介助」を導入してから、対応時の事故が減少し、スタッフ満足度も向上した。
さらに、心理的安全性の確保も忘れてはならない。認知症症状による暴言や拒否行動は脳神経外科外来では頻発し、スタッフの精神的疲弊を招いている。院内で情報共有し、個々のスタッフに責任を押し付けない風土を作ることが効果的である。定期的なミーティングで事例を振り返り、組織としての対応基準を固めることで、不安が軽減し安全対策が習慣化していく。
労務管理の視点では、患者対応リスクの高さを考慮した職務設計も重要となる。新人スタッフを脳神経外科外来に配置する際は、OJT計画を細かく設定し、危険場面を事前に学ばせる必要がある。また、事故発生時の報告ルートを明文化し、スタッフの申告を守る仕組みを整えることが組織の安全文化の形成につながる。
これらの施策は、スタッフを守りながら診療の質を高め、結果として患者満足度にも寄与する。脳神経外科外来における高齢患者対応は、単なる介助業務ではなく、組織全体で取り組むべき安全管理そのものである。今後、診療所の高齢化がさらに進む中で、スタッフの安全を守れる体制を整備することは、労務リスクの低減に欠かせない経営戦略となる。
執筆:特定社会保険労務士 鈴木教大(社会保険労務士法人レクシード)
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