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手術・処置日増加に伴うオンコール運用と手当設計(形成外科)

形成外科の特性として、予定手術に加え、外傷や感染など急変要素を含む症例が定期的に発生する。特に処置件数の増加時には、医師・看護師・場合によってはクラークや麻酔科との連携を含めた待機体制の質が直接的に治療成績だけでなく、スタッフの負担や離職リスクにも影響する。
そのため、手術・処置日を中心としたオンコール運用を労務管理の視点で再構築し、法令に適合した待機手当を設計することが重要となる。

以下では、医科向けに特化し、実際のクリニック・病院現場で社労士として関わってきた経験も踏まえながら、形成外科に最適化したオンコールの運用ポイントを整理する。

【手術・処置件数増加によるオンコール必要性の高まり】

形成外科では、手術日が増えるほど術後管理の需給が不連続になりやすい。術直後の出血確認や疼痛増悪、縫合部の状態観察など、一定の時間帯で急な介入が必要になるケースが多い。
また、形成外科特有の美容領域を併設する場合、術式によるリスク説明やトラブル発生の問い合わせが休日や夜間に集中する傾向もみられる。

私自身、複数の形成外科クライアントで「手術日の翌日は電話が鳴りやまない」「軽度の症状でも不安が強い患者が多い」などの相談をよく受けてきた。このような状況では、オンコール担当者を明確化し、連絡ルートを一本化しないと、院内混乱が生じやすい。

【オンコール運用構築の基本方針】

オンコール運用は、次の三つを基礎として設計するとスムーズである。

  1. 対応範囲の明確化
    オンコール時の対応義務は「待機」なのか「拘束」なのかで労働時間の扱いが大きく変わる。
    形成外科では、緊急性が高くないケースも多いため、原則は「自宅待機(待機時間は原則労働時間に該当しない)」として設計する方が法的整合性が高い。
    ただし、医療法上の診療体制の要件や、術後管理の重要度により、一定の対応が“実質拘束”と判断される可能性があるため、院としては、連絡受電からの反応時間や出勤が必要となる目安を文書で定義しておくべきである。

  2. 担当者の役割分担
    形成外科では医師オンコールに加えて、看護師の待機を併用し、トリアージを行わせる運用が多い。
    「まず看護師、必要時に医師へ連絡」という二段階システムにすることで、医師の深夜対応件数を大幅に軽減できる。
    あるクリニックでは、オンコールを一律医師に向けていたため、1件5分の相談が深夜に10件発生し、翌日の外来に支障が出ていた。オンコール看護師を設けたことで、医師呼び出しは月5件以下に減少した。

  3. 可視化ツールの活用
    記録の属人化を避けるため、オンコール対応記録を電子カルテ・LINE WORKSなどへ統一し、問い合わせ内容と判断プロセスを可視化する。
    労務リスク管理の観点からも、記録は「労働時間の把握」および「安全配慮義務履行の証拠」に直結するため、必須の運用である。

【オンコール手当の設計方法】

次に、オンコール手当の設計における実務ポイントを整理する。

  1. 待機手当(オンコール手当)
    自宅待機であれば、金額は院裁量で設定可能。
    医科の現場では、1回500円〜3000円の範囲がよく見られる。
    形成外科では患者の不安度が高く夜間連絡が多いため、やや高めの設定(1回1500円〜3000円)がスタッフ確保には有利である。

  2. 呼出手当・時間外賃金
    実際に出勤した場合は、その時間は全額労働時間として扱い、割増賃金の支払いが必須となる。
    形成外科では、術後管理の呼び出しが短時間で終わるケースでも労働時間に該当するため、15分単位よりも1分単位計算の方がトラブル防止になる。

  3. 電話対応が発生した場合の扱い
    「電話が鳴った瞬間から労働時間」と明確に定めておくことで、対応時間の申告漏れが減り、結果的に職場の透明性向上につながる。

  4. 月次管理と労働時間上限対策
    オンコール担当が同じスタッフに偏ると、時間外労働の上限に抵触する場合がある。
    私が支援した形成外科クリニックでも、看護師1名が連続してオンコール担当となり、月100時間以上の実労働と判断されかねない記録が出ていた。
    これを機に「週間ローテーション」「休日の交代制」「オンコール免除期間」を導入し、年休とのバランスも改善した。

【形成外科特化の注意点】

形成外科には他科と異なる業務特性があるため、オンコール設計は医科一般の方法論だけでは十分ではない。

・美容術後の腫脹・内出血に対する不安訴えが多い
・緊急性のレベルが症例により大きく異なる
・SNS経由の相談が増えており時間管理が困難
・翌日の診療に影響する問い合わせ量が多い

このため、オンコールの院内ルール作成時には特に次の二つを重視すべきである。

  1. 医師と看護師によるトリアージ基準を具体的に明文化する

  2. 患者向けに「受診すべき症状」「様子見が可能な症状」を事前に案内

患者説明が十分であれば、オンコール対応件数が平均30〜40%減ることを経験的に確認している。

【就業規則・内規への反映】

オンコールを制度化する際は、就業規則または別紙規程に次の要素を必ず盛り込む。

・オンコールの定義
・担当者の決定プロセス
・対応範囲
・待機手当の金額と支払いルール
・呼出時の割増賃金の計算方法
・記録方法
・労働時間管理の基準

あいまいな運用のまま始めると、1年以内に「手当が安い」「いつも同じ人に偏っている」といった不満が必ず顕在化する。制度化こそ労務トラブル予防の最重要ポイントである。

【まとめ】

形成外科の手術・処置日増加は、オンコール負担が高まる一方で、制度設計を誤ると離職や勤務意欲の低下につながる。
適切な待機手当と呼出手当の設計、トリアージ体制の整備、患者向け説明の充実、記録の可視化を組み合わせることで、医療安全とスタッフ負担軽減の両立が実現する。

 

執筆:特定社会保険労務士 鈴木教大(社会保険労務士法人レクシード)

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